ーーERPベンダーのパッケージとの違いは? シングルプラットフォームのメリットは?
RapidResponseは”1つのデータ、1つのソリューション”であることからシングルプラットフォームと呼んでいる。これをベースに、スケジュール、プランニング、フォーキャスト、アナリティクスなどすべてが動く。これまでは各分野で機能を用意していたが、必要なソリューションがすべてビルトインされた単一の統合アプリケーションだ。ユーザーは、需要サイド、供給サイドとすべてのポートフォリオにアクセスできる。
日本ではトヨタ自動車、日産自動車、アシックスなどがRapidResponseを採用しているが、メリットはエンドツーエンドの可視化だ。自分の環境で動かすことができるアプリケーションの機能に制限されない。このレベルの可視化は我々の差別化だ。次にコスト効果がある。
サプライチェーンの目的は、時間を短くする、可視化の2つだと考える。ある顧客は担当者がサイロでプランニングサイクルを持っていたが、RapidResponse導入により、各担当者は全体的な視点を得られ、お互いが何をやっているのかがわかるようになった。これにより、数億ドルの節約につながったという声も聞く。
例えばP&Gではハリケーンが米国を襲った際に、供給拠点がダメージを受けるときに被害を最小にするためにどこで生産すれば良いのか、どの在庫から市場に送れば良いのかなどのシミュレーションを事前に行うことができた。
財務的なシミュレーションも可能だ。あるサプライヤーからパーツを仕入れると20%コストを削減できるが、納期が10%遅くなるような場合、シミュレーションを使ってインパクトを瞬時に把握できる。
SAPを入れていてもシングルプラットフォームというより、SAPのインスタンスが複数あるという状況の企業が多い。可視化実現のためにERPを統合するには時間とコストがかかる。それよりも、関連システムからデータを吸い上げて顧客のプラットフォームで統合するアプローチの方が、時間とコストを抑えることができる。
ーー日本市場に力を入れるとのことだが、その戦略は?
日本は素晴らしい企業があり、中でも輸出、グローバル製造などで卓越している。RapidResponseにとって重要な市場だ。
この1年で人員を2倍にし、売り上げもほぼ倍増した。力強い成長を感じており、今後も継続して積極的に投資していく。2018年第3四半期には、東京と大阪の2箇所にデータセンターを開設する計画だ。これにより、日本の製造業のビジネストランスフォーメーションをサポートできる。
業界では、自動車、製薬・医療機器、消費財、半導体やハイテク・電子機器など、サプライチェーンが複雑なところが我々のターゲットとなる。
ーー2018年1月にトヨタ自動車が車両需給管理にRapidRespoonseを採用することが発表されました。自前主義と言われるトヨタ自動車がパッケージを採用するのは珍しいように見えます。
トヨタ自動車に限ったことではないが、自動車メーカーにとってサプライチェーンはますます複雑になっている。トヨタ自動車は北米、欧州、南米と地域でサイロ化しており、サプライチェーン全体の可視化が必要だと感じていたと聞いている。ある地域でエンジンが、別の地域でシャーシができ、サードパーティのサプライヤーも存在するとなると、Just In Time環境を構築するのは難しい。
自前かパッケージかについてだが、グローバルの大企業はどこも大規模なITを持っており、やろうと思えば自社で自分たちの複雑な要件をサポートできるシステムを開発できる。だが、サプライチェーンの領域は複雑だ。実際やってみると、洗練された高度な機能レベルを自分たちで開発するのは難しいということに気がつく。
たとえ開発できたとしても、成功する企業がどこも重視しているコモディティは時間。2、3年がかりで開発するよりもベストインプラクティスのソリューションを購入する方が理にかなっていると考えている。
--早期からSaaSとして提供しています。
2006年からSaaSとして提供している。オンプレミスとクラウド、両方提供してきたが新規顧客はSaaSのみの提供となる。
IT基盤を自社で持つことは最重要事項ではなくなった。顧客は、データセンターの構築と管理ではなく、自社のコアや中核にフォーカスしたいと思っている。SaaSはそれを可能にする。Kinaxisの顧客のほぼ100%がSaaSを利用している。