コーディングが不要あるいは最小限のコーディングでアプリケーションを開発する「ローコード開発」が日本の大手企業の間にも広がり始めたという。ローコードプラットフォームを展開するOutSystemsが国内市場の拡大に乗り出している。
OutSystemsは、2001年にポルトガルで創業し、現在は12カ国の拠点と約700人の従業員を持つ。アプリケーションの要件定義、設計、テスト、実装、運用のライフサイクル全体をカバーする「OutSystems Platform」を展開し、日本法人を2017年1月に設立。従前はソフトウェア開発のBlueMemeが国内総代理店として、OutSystemsのローカライズ支援開発や販売などを行っていた。
OutSystems 北アジア総括責任者兼日本法人代表取締役社長のArnold Consengco氏
同社は20年近い歴史を持つローコード開発専業のソフトウェアメーカーだが、ローコード開発自体が企業に広く採用され始めたのは、2014年頃からだという。元々は高速開発、高速インテグレーションを目的に、ソフトウェア開発者の生産性を向上させるソリューションとして使われ始めたが、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション」ブームの到来とともに、アプリケーションの開発と展開を強化する企業が増加した。
「アプリケーション開発では、事前に要件定義を固めても、必ず次々に要件が追加され、非機能要件にも対応して、当初に計画した予算や期間の中に収まることがない。OutSystems Platformは、そうした事態を最小限に抑制することをコンセプトにしており、導入企業から評価をいただけるようになった」(北アジア総括責任者兼日本法人代表取締役社長のArnold Consengco氏)
国内での新規顧客数の増加は、2015年まで年間10社に満たなかったが、2016年は16社、2017年は24社を獲得。2018年は3月までの第1四半期で既に7社を獲得し、70社以上となった。顧客の業種は、当初は製造が中心だったが、近年は自動車、IT、通信、流通、交通、金融、化学などに広がる。
Consengco氏によれば、デジタルトランスフォーメーションを背景とするアプリケーション開発では、アジャイルやDevOpsなどを駆使して絶え間のないリリースとアップデートを繰り返しながら、同時に機能の追加や変更を適切に管理し、品質や性能の評価、可視化も行う必要がある。OutSystems Platformでは、当初から備えるモデル駆動型のローコード開発だけでなく、企業利用で求められるアプリケーション資産の管理やガバナンスをカバーしたことで、「従来のウォーターフォールのメリットを、アジャイル+OutSystems Platformで実現していくイメージだ」と話す。
ただ、デジタルトランスフォーメーションを背景にした導入は、主に海外でのことといい、国内では、レガシーアプリケーションの移行を目的にした採用が多いという。
「既にCOBOL技術者が退職して仕様書も残っていないという状態からアプリケーションをモダナイズ(近代化)しなければならず、まずはOutSystems Platformで現行の資産を可視化し、ウェブ化などを進めているケースが少なくない。海外は既にこのフェーズが終了しているので、日本の状況を加速させるための支援を強化する目的から日本法人を設立した」(Consengco氏)
OutSystems Platformでは、アプリケーションライフサイクルの各段階で開発者の生産性を引き上げるという
2016年にリリースした現行版のOutSystems Platform(OutSystems 10)では、主にモバイルアプリケーション対応を強化したが、2018年秋頃にリリース予定の次期版では、コンテナ技術やクラウド環境でのオーケストレーション機能などを大幅に強化する。当初は2人だった日本法人の体制も2018年中に20人規模に増強する計画で、「2018年中に日本の顧客を100社の大台に乗せたい」(Consengco氏)としている。