NECと産業技術総合研究所(産総研)は、「希少事象発見技術」の開発を発表した。発生確率が極めて低く、設計段階で事前に発見が難しい不具合を人工知能(AI)が学習をしながらシミュレーションを繰り返すことで、効率的に見つけ出すという。
同技術の活用では、今後複雑化する機器の設計/生産や社会インフラの運用において人の判断を支援し、まれながら重大な結果をもたらす不具合を設計段階で事前に発見して除去することにより、製品の品質やインフラ運用における信頼性のさらなる向上に貢献することが期待される。
新製品を設計する際の不具合検証では、熟練の専門家がさまざまな条件を想定してシミュレーションを繰り返しながら不具合を探索する現状があるが、まれにしか起こらない不具合は発見に時間がかかるという課題がある。
今回、同技術を光学機器の設計検証に実際に適用したところ、発生確率が1億分の1程度とまれであるものの、性能低下の原因となる「迷光」について、熟練の専門家が1週間を要していた検証作業を約1日に大幅に短縮し、複数の不具合を見落とすことなく発見することに成功した。
「希少事象発見技術」の概要
AIによる不具合を探索では、学習結果に基づいて、頻度が低いために不具合の検証が不十分になりがちな条件の近傍を集中的に探索する一方、頻度が高く検証が十分な条件についてはまばらに探索する。今回開発した技術では、発生頻度に応じて意図的に不均一に探索するアルゴリズムを開発し、まれな不具合の発生条件を効率的に絞り込むことを可能にした。
また、探索過程で最初に発見した不具合の発生条件の近傍に探索が集中し過ぎると、複数の不具合があった場合に、他の不具合を見落とすリスクが高まる。同技術では、不具合の程度と発生頻度の学習結果に基づいてAIがこの比率を計算し、不具合近傍探索の集中度を調整する。今回の検証では、見落としリスクを軽減する最適条件を数理的に導き出し、不具合近傍とそれ以外の探索の比率が50%ずつであることが証明された。