ServiceNow Knowledge

AIがデータの飽和状態とユーザー体験を改革--“ギークエンタープライズ”の到来

末岡洋子 2018年05月15日 10時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ITサービス管理などのSaaSを展開するServiceNowは、プラットフォーム戦略を進めている。5月10日まで米国ラスベガスで開催した年次カンファレンス「Knowledge 18」では、DevOpsへの拡大を発表、ITのサービス管理から開発分野にターゲットユーザーを広げる。Knowledgeの会場で、ServiceNow 最高イノベーション責任者を務めるDave Wright氏が各国の記者向けにラウンドテーブルを開き、ServiceNow内で進めている技術革新について人工知能(AI)を中心に話した。


ServiceNow 最高イノベーション責任者のDave Wright氏

 Knowledge 18の目玉の1つが、サービスの次期リリース「London」で登場する「Virtual Agent」だ。講演のデモでは、在宅勤務の従業員がモバイル端末を使ってITサービスのチャットサービスにアクセスし、チャットボットと会話ベースで新しいPCを申し込む、という流れを見せた

 Wright氏によると、Virtual Agentの構想そのものは2年半前からあったが、必要な技術の獲得に時間がかかったという。土台となるのは、同社が2017年1月に買収した機械学習技術のDxContinuum、それに同年5月に買収したQlueなどのAI関連技術だ。ServiceNowは、企業買収で買収先の製品の提供を中止し、自社プラットフォームに組み込んでローンチする。そのため、買収後にその技術を改めて提供するまでに時間がかかるとWright氏は説明する。その代わり、さまざまなサービスで同じ技術を使えるというプラットフォーム戦略を展開できる。Virtual Agentも、ITサービス管理だけではなく、人事など他の分野にも拡大する。

 AI利用のボットに注目する理由についてWright氏は、「データがたくさんある。電子メールだけを見ても、飽和状態にある。現在の状況そのままでは効率よくやりとりすることができない」と説明する。また、モバイルの利用もVirtual Agentのようなやりとりを必然にしているようだ。

 Wright氏は、「これまでPCでやっていたことを(スマートフォンなどの)5インチの画面に縮小すると、使いにくい画面になる。何がやりたいのかを会話形式で入力できるので、ユーザーは本当に必要な情報のみを入力すれば良い」という。サービスにアクセスするにあたって、求められる情報入力の中には、本当に必要ではないものもある。「ケースにより必要な情報は異なる。一律的に入力を求める必要はない」(Wright氏)

 サービスがユーザーの位置情報、所属部署や役割、使用中のソフトウェア、ハードウェアなども理解しているので、パーソナライズした効率の良い会話ができ、リクエストの数を15~20%削減できるとみる。

 AI技術は、主として買収で獲得してきたが、最新の動きが5月初めに取得したParlo.ioだ。Parloは自然言語理解技術で、主語、動詞など人の話し言葉を分析する。これを利用して、ボットをトレーニングし、専門用語やアクセントなどをよりよく理解できるようになるという。

 Virtual Agentは、ServiceNowが掲げる「普通の人が効率よく仕事ができる」という目標を具現するものでもある。「システムとエンゲージする方法が1つしかないという時代ではない。好きな方法でシステムにアクセスできるという点で、Virtual Agentは新しい抽出レイヤと言える」とWright氏は述べ、ユーザーが好きな方法でアクセスできるようにすることが重要だと続ける。

 「AIというと雇用への懸念が聞かれるが、むしろリソースを効率よく利用できるという側面に注目すべき」とWright氏はいう。例えば、ヘルプデスクに電話がかかってきた際、リアルタイムでAIが会話を分析し、関連する情報をエージェントに表示する――洗濯機の故障で電話してきた顧客に、エージェントが機種名を尋ねると、顧客が回答した機種名をAIが聞き取り、その機種のマニュアルがエージェントの画面に表示される――といった例も考えられるという。「スキルセットを強化できる、効率よく情報を合わせることができる」とし、これがServiceNowがAIに期待することという。

 ServiceNowでは技術革新にフォーカスできるように、イノベーションチームを開発部隊と分けている。イノベーションチームは年間6、7のアイディアを出して検討し、そのうち3、4つが実際に製品化されるという。現在大きなフォーカスをしているのはモノのインターネット(IoT)、ユーザー体験、マルチクラウド、DevOps関連などだ。中でもIoTについては、事業部を立ち上げて、開発を進めているという。

 ユーザー体験については、「将来の世代は技術に対する意識が全く異なる」と述べる。「所有よりも共有とアクセスの世代であり、これが仕事にどのような影響を与えるのかは興味深い」とWright氏。

 「人のスキルは1つではない。さまざまなスキルを持った人がおり、企業がそれを利用できる」という考え方ができるとする。現在の組織内における人材の“サイロ”状態では、ある部署に卓越したExcelスキルを持つ人がいても、そのスキルが不要であれば埋もれてしまう。「タスクベース」の集合体に変わっていくかもしれないとWright氏は述べ、“ギークエコノミー”にかけて“ギークエンタープライズ”の時代を展望した。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

連載

CIO
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]