キュアからケアに移行--新薬開発の治験ITサービスから見えてくる医療の未来

阿久津良和 2018年05月17日 11時30分

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 メディデータ・ソリューションズは5月10日、都内でメディアラウンドテーブルを開催した。治験ITサービスを提供する同社は、患者のキュア(治療)からケア(介護)する時代への移行が求められると説明しつつ、臨床試験に不可欠となる被験者を中心に沿えたクラウドサービスを解説した。代表取締役の山本武氏は「ICTを駆使して新しい医療や治療方法を即座に届けたい。人の健康や命に貢献する使命がある」と語る。

 本来1つの製薬が誕生するまでには、長期の研究・開発期間を要する。多様な試験を繰り返し、最終段階で人間を対象に安全性や有効性を評価する「治験」というプロセスは欠かせない。

メディデータ・ソリューションズ 代表取締役 山本武氏
メディデータ・ソリューションズ 代表取締役 山本武氏

 その新薬や医療機器の開発支援統合サービス「Medidata Clinical Cloud」を提供するメディデータは医療・治験業界では著名な企業だ。同社が持つ技術を使用した製薬は上位15品目中13種、世界売り上げトップ25の製薬企業中18社を顧客としている。

 Clinical Cloudはデータを収集したり管理したりする「Rave」、治験計画を立てたり管理したりする「Edge」、その両者が重なり合う「MEDS & AI」という柱で構成。Raveは症例報告書や臨床患者の同意取得といった個別の機能を提供し、Edgeは試験計画やモニタリング、リスク管理といった部分を担う。

 多様な機能を備えるプラットフォームだが、製薬関係企業がすべての機能を使う訳ではないものの、4機能以上は22%、2~3機能は60%、被験者データの電子データ収集(Electronic Data Capture:EDC)や臨床データ管理システム(Clinical Data Management System:CDMS)の機能を担うサービス「Rave EDC」の単独利用は18%におよぶ。日本における同社サービスを利用した承認製薬品目数も112品中74品(2016年時点)を誇る。

Medidata Clinical Cloudの構成図(出典:メディデータ)
Medidata Clinical Cloudの構成図(出典:メディデータ)

 とある調査では、「過去10年間で治験コストは2倍以上、(検査項目の増加や療法回数などを指す)複雑度も2.5倍以上と言われている」(山本氏)。だが、治験計画の「大半は過去に行った治験実施計画書を書き直している。(クラウドプラットフォームを通じて)その治験は業界の平均と比べてコストや複雑度が博している。“この医療分野では不要”などガイダンスを提供し、計画を抜本的に見直せる」(山本氏)のがClinical Cloudだと強調する。

 IT業界が技術進歩とともに変化するように、医療品開発にも新たな戦略が求められるとメディデータは説明する。

 「保険診療システムの見直しや医療費削減、遠隔医療の推進などに伴う『社会構造の影響』。患者の特徴に応じて治療する個別化医療といった『ターゲット疾患』。患者の医療知識向上に伴って行動する患者が増加し、患者視点の臨床試験、成果を重視する『患者中心』が求められる。また、過去の製薬開発はデータ量が増えるとコスト増につながるものの、現在は経営負担とならない。スマートフォンなどを医療に導入して(モバイルデバイスなどを活用して治療する)“mHealth”やAI(人工知能)活用による『デジタル戦略』が必要だ」(山本氏)。その結果、製薬開発は個別化医療に価値を見いだすように変化が生じている。

 製薬開発の場面に同社のサービスを活用することで、メディデータは「試験デザインと計画」「試験の実施」で大きなビジネス価値を生み出すと説明した。

 紙ベースの症例報告書を電子化した電子症例報告書(electronic Clinical Report Form:eCRF)サイクル期間を業界平均値と比較した際の短縮率は28%(2017年11月時点)、eCRF再利用の増加率は61%(2014年以降)に向上。試験実施時も多くの場面でコスト削減や時間短縮を実現するが、1例を挙げればモニタリング費用の削減率は110万ドル(約1億2000万円、2014年以降)に及ぶという。

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