「インフラ環境の常識が変わる」
こう話すのは、米Gartnerのグループバイスプレジデント、John Enck(ジョン・エンク)氏だ。ガートナージャパンが4月25日から3日間東京で開催した「Gartner IT Infrastructure,Operations Management & Data Center Summit」で複数の講演を務めたEnck氏は、システム開発における文化から人材面、GPUの利用範囲拡大などさまざまな観点から、ITインフラの常識が変わりつつあることを説明した。
米Gartnerのグループバイスプレジデント、John Enck氏
「失敗を防止することがこれまでの常識。だが、失敗してもいいという文化への転換が進むかもしれない」とEnck氏。
障害がある環境を意図的に作り上げている例として、Amazon Web Services(AWS)上にシステムを構築するNetFlixが使うテストツール「Chahos Monkey」を挙げた。Chahos Monkeyは、クラウド上においてインスタンスやクラスタに意図的に障害を起こす。これにより、パフォーマンスをはじめ、システムの脆弱性などさまざまな情報を把握する。
止めてはいけないウェブ環境の障害をなくすために考えられた、逆転の発想とも言える施策だ。「障害が起きてもいい文化」が、今後の情報システムを構築、運用する上での鍵となるとEnck氏は話す。
この背景に、進みつつあるデジタルプラットフォームには、新たな思考が必要という事情があるという。
2020年に向けてプラットフォーム思考の必要性
10年余り前の2007年の特徴は、テクノロジの縦割り化、パイプライン思考、テクノロジファーストだったと同氏。2017年はサービスの工業化、コストの最適化、サービスファーストだったと振り返る。テクノロジ思考からサービス思考だったこれまでの流れから、2020年はプラットフォーム思考の重要性が増すという。
プラットフォーム思考で必要なのはビジネスイノベーションであり、キーワードは製品へのフォーカス、プラットフォーム相互接続を活用、アジリティ/イノベーションファーストだという。
さまざまなサービスが点在しているだけでは不十分であり、それを束ねる基盤が必要――それがプラットフォーム思考と考えられる。Enck氏は「プラットフォーム思考にはプログラム可能なインフラストラクチャが必要」と主張する。
プログラム可能なインフラストラクチャとは、ソフトウェア開発で利用した手法とツールの活用を、ITインフラクチャの管理に転用する概念を指す。具体的には、自動化、バージョン管理、API、アジャイルなどさまざまな場面が考えられる。
メインフレームは代替不能だが
インフラ分野に訪れるこうした変化は、ウェブ環境だけに限らず、基幹系システムにも及ぶと同氏。
「メインフレームのシステムをクラウド化するのは難易度が高い」とする一方で、「UNIX系のシステムは、Linuxとの相性が良いことなどもありクラウドに持っていきやすい」という。
今後、基幹系システムのクラウド化の波が確実にやってくると言われているが、Enck氏の言葉はそれを裏付けるものとなっている。