2.RPA人材・組織の確立
「業務のRPA化が進むと、これまで人間がやってきた仕事はどうなるのか」という質問も多い。ともすると、「RPA化によって仕事が奪われ雇用の機会が失われるのでは」といった不安の声も聞かれる。しかしながら、実際にはそのような状況にならないというのが我々の見解だ。
日本経済は時代の流れとともに大きく働き方が変化した。オフィスにおけるPCの利用はここ30年ほどのことである。当時はワープロ専用機が全盛期で、インターネットや電子メールもない。コンピュータシステムは汎用機(メインフレーム)と呼ばれ、大型で非常に高価なものだった。
その状況から比べると、誰でもPCやスマートフォンを使えて、どこからでもインターネットにつながる昨今の業務環境は、当時の想像を超えるものである。しかし、さまざまな手作業がなくなったからといって、人間の仕事がなくなりはしていない。これは生産性向上とともに経済が成長し、新たに生み出される仕事に労働力が再配分された結果なのである。
ただし、RPA化により一人でできる仕事量や生み出せる価値はさらに大きくなる。そのような変化に柔軟に対応することが求められる。
すなわち、ソフトウェアロボットが得意とする定型業務は全て自動化され、人間はそのロボットを“部下”して活用しながら、より専門性の高い仕事をすることになるだろう。
具体的には下図に示す通り、各機能の専門性を研ぎ澄ました高度なスペシャリスト、市場と向き合い顧客価値を創造するクリエイティブな事業推進者、RPAやAIといったデジタル技術で企業内プロセスを設計するプロセスイノベーター(推進責任者)といった役割へとシフトすることになるだろう。
RPAが前提となる時代においては、このような役割分担を意識しながら人材の確保と育成をすることが必要となる。特にプロセスイノベーターは現在の情報システム部門が進化した位置付けとして、CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)の指示のもと、デジタルによる企業変革を担うことになる。
