2016年7月にソフトバンクグループが買収を発表した英Arm。スマートフォンや組み込み機器などさまざまなデバイスに利用されるCPUについて、設計図などのIP(知的財産権)を提供する事業を手掛ける。
既に1000億を超えるデバイスにArmプロセッサが導入されており、2035年には1兆個のデバイスがインターネットにつながる世界をArmは想定している。Armは、売り上げの9割を占めるCPUへのIP提供サービスという柱のほかに、IoTプラットフォームとして「Arm Mbed Platform」の展開に注力している。
Mbed Platformを手掛けるArmのIoT Service Group プレジデント、Dispesh Patel氏
Mbed Platformを手掛けるArmのIoT Service Group プレジデント、Dispesh Patel氏は「1兆個のデバイスは道路のコンクリート、電球、病院、クルマ、畑などあらゆる場所に実装される」と語る。
単純なセンサや複雑な産業用に至るまで、さまざまなデバイスがある。実際には、こうしたデバイスがオンプレミスシステムにあっても、クラウドなどほかのどこにあっても統合的に管理し、企業全体で活用できる必要がある。さらに、IoT導入における大きな懸念事項となるのがセキュリティだ。
このような管理とセキュリティの両方のニーズを基盤として満たそうとするのがMbed Platformだ。Mbed Platformは、接続性、デバイス管理、セキュリティ、プロビジョニングなど、IoTに欠かせない機能を提供するもの。開発者コミュニティにおいて、ここ1年で30%増となる30万人以上、80社以上のパートナーの支持を得ているという。
IBM Watson IoTとの連携、サイバートラストやGMOグローバルサインとの協業によるBYOC(Bring Your Own Certificate)方式によるIoTセキュリティ認証を実現するなど、信頼性を高めている。
Armはこのプラットフォームを日本でどのような分野に導入しようとしているのか。Patel氏は、スマートビルディング、エネルギー、物流・流通などを挙げる。スマートビルディングは、建物全体のエネルギーを最適化できる次世代型のビルを指す。スマートビルディングの特徴は、エネルギー管理システム(BEMS)を導入していることで、電力使用量の可視化や節電のための機器制御に、IoTデバイスが用いられる。
また、病院への導入も視野に入れているという。治療に必要な医療用具などを、看護師が簡単に見つけられるような仕組みを想定する。
現状は大規模な導入事例はないが、製造業におけるサプライチェーン上でのアセット追跡の用途も考慮している。移動するパレットにセンサをつけ、部品や製品の個数を管理するといった使い方だ。
Patel氏は「デバイスの多様性を受け入れながら、クラウドにどうつなげるか、セキュリティを担保していくかが鍵になる」と話している。