同じドイツ企業、SAPとSUSEの特別な関係
それでは、今後の競争力の源泉は何か。川崎氏の話から、筆者が注目した2つのポイントを挙げたい。
まず1つは、「The Open, Open Source Company」という企業としての姿勢だ。「オープンなオープンソースカンパニー」とは、いったいどういうことか。川崎氏によると、形容詞である「オープンな」には「お客さまに選択肢を提供する」との意味が込められているという。
その背景には、前項の図2に示したように、SUSEがLinuxをはじめとして、SDIとApplication Deliveryの領域に事業を広げてきていることがある。それによってSUSEは、どの領域においてもオープンソースとしての選択肢を提供していける会社であり続ける――というメッセージが「オープンなオープンソースカンパニー」との表現に込められているようだ。
もう1つの注目点は、SAPとの特別な関係だ。同じドイツの企業であるSAPとSUSEの関係は、1999年に、SAPが自社のアプリケーション用LinuxとしてSUSE製品を初めて認定したことに始まり、これまで次の図3に示す取り組みを両社で行ってきた。現在は、前項の図2に示したSUSEの製品ポートフォリオの殆どの領域でSAPとのグローバルパートナーシップが展開されている。
図3:SAPとSUSEのパートナーシップの変遷(出典:SUSE Japanの資料)
とりわけ、クラウドおよびコンテナソリューションにおいては、以下の図4に示したように、SAPのクラウド基盤である「SAP Cloud Platform」、SAP製品をサービス展開している「Public Cloud」、SAPのビッグデータ分析ソリューション「SAP Vora」、そして「HANA Enterprise Cloud」に、SUSEの製品群が適用されている。ちなみに、Public CloudではAmazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google、IBMといったメジャープレーヤーとパートナーシップを結んでいる格好だ。
図4:クラウドおよびコンテナソリューションにおけるSAPとSUSEの協業(出典:SUSE Japanの資料)
こうしたSAPとSUSEの特別な関係が顕著に表れている数字がある。前項の図1に記されている「Linuxで稼働する全SAPアプリケーションの70%はSUSE」というのが、それだ。さらに、川崎氏によると、これがSAP HANAになると90%に跳ね上がるという。
実は、これがSUSEにとって今後の大きな競争力の源泉になり得る。というのは、SAPが今後、ERP(合基幹業務システム)をはじめとした全ての自社アプリケーションをSAP HANA上で展開していく方針を打ち出しているからだ。もちろん、SAP HANAの普及次第というところはあるが、ビジネスとしてのポテンシャルは非常に大きいだろう。
こうしたSAPに関連する市場については、川崎氏も「日本でも相当なポテンシャルがあるので、これまで以上にビジネスパートナーとのネットワークを広げるとともに、個々の連携を強化していきたい」との意気込みを語っていた。
これまで同じオープンソースの競合の中でも、日本ではあまり目立たない存在だったイメージのSUSEだが、SAP HANAの登場で市場の流れが大きく変わるかもしれない。それこそ、川崎氏の手腕の見せどころでもある。