日本マイクロソフトは5月28日、都内で金融市場向け戦略説明会を開催した。29日から金融デジタルイノベーションコンソーシアムが活動を開始し、金融機関のクラウド移行初期フェーズを、FIXER及び日本マイクロソフトが用意するメニューで無償支援するサービスを28日から9月末まで実施する。
日本マイクロソフトは、「技術的側面と組織側面の両者に関わる阻害要因を取り除き、金融機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援したい」(日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部金融サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長 綱田和功氏)と説明した。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部金融サービス営業統括本部 業務執行役員 統括本部長 綱田和功氏
2018年度の経営戦略として、「働き方改革Next」「インダストリーイノベーション」に軸足を置いているが、後者を構成する産業の1つ「金融」について、クラウドシフトが立ち後れている産業ながらも、昨今は変化の兆しを見せているという。
同社はAdobe Systemsの調査を引用しつつ、「ここ1~2年は金融機関のDX化が加速している。顧客が銀行を乗り換える理由の1位(38%)は『金利』だが、ほぼ同順となる2位(37.3%)に『オンラインサービスが使いやすい』がランクインした。このように顧客体験の改善がビジネスの成長につながる」(網田氏)。
では、それを実践できない事情はどこにあるのだろうか。日本マイクロソフトは変革プロセスについて、「下支えとなるモード1(既存ITシステム領域)のモダナイゼーション(旧態化したシステムのモダン化)が、モード2(新規ビジネス領域)のDXを押し上げ、新たなビジネス価値を創造する」(網田氏)と語る。具体的には、モード1でコスト減や企業文化の変革を実現し、モード2による異業種連携など新技術を使ってDXにチャレンジしなければならないものの、現場レベルではいくつかの阻害要因があるという。
技術的側面ではオンプレミスのIaaS化が主目的化し、運用コストの削減を実現できない場合は、PaaS化など新たなゴール設定の見直しが必要。SI技法や社内ルールなど古い文化が阻害要因となる組織的側面に対しては、社内プロセスなど多面的な見直しを図り、組織の近代化が必要となる。
これらを実現するのが、日本マイクロソフト及びFIXERが提供する金融機関向けクラウド移行初期フェーズだ。クラウド移行診断や近代化ギャップ診断を9月まで無償提供し、金融機関のクラウド移行を技術的&組織的側面から支援する。

2018年5月28日から同年9月末までFIXERと共に、クラウド移行初期フェーズにあたる各種診断サービスを無償提供する
他方で、日本マイクロソフトは既に金融機関が単独で、包括的な顧客体験を実施する時代ではないとする。FinTechという文脈で見るとスタートアップの台頭は目覚ましく、顧客チャネルやビジネスプロセスの改善を可能とするサービスは枚挙に暇がない。これらの状況に対して同社は、「オープンイノベーションを通じた協業でDXを目指す時代」(網田氏)だと分析する。
その一環として、10月30日に発表した「金融デジタルイノベーションコンソーシアム」の活動を、5月29日より開始することを明らかにした。野村総合研究所が推進役、日本マイクロソフトが事務局を務め、FIXER、インテック、インフォシスリミテッド、ニューメリカルテクノロジーズ、新日鉄住金ソリューションズ、電通国際情報サービス、日本システム技術、日本ビジネスシステムズ、日本ユニシスが名を連ね、参画企業に変更はない。

明日29日より活動を開始する「金融デジタルイノベーションコンソーシアム」
日本マイクロソフトは具体的な数字を言及しなかったものの、金融業界でのMicrosoft Azureの採用が増加し、「(同業界での)対前年度比は200~300%。AWSと拮抗していると認識している」(網田氏)と述べつつも、クラウドベンダーとの争いではなく、金融機関向けクラウドの市場規模成長に勢いを与えつつ、利用顧客の拡大を目指すと説明した。同社は金融業界におけるMicrosoft Azureの導入事例として、三井住友銀行及び住友生命保険の2社を次のように紹介する。