清水:その他にはどのような「あるある」がありますか?
旧情シス係長:ITに詳しい人ならすぐ分かるのですが、「共有」という言葉の意味がなかなか理解されないのが辛いのです。「共有プリンタ」「共有のファイル」「クラウドで共有」など、それぞれ共有の意味が違うことを都度説明するのがとても困難です。ファイルの共有がうまくいかないと「今のデータはどこでどうなっているんだ」と怒り出す人もいて、なかなかイメージを伝えることに苦慮しています。
スタック先輩:数Gバイトのファイルをサーバからダウンロードしながら、「何でこんなに時間がかかるんだ」と突然電話を掛けてくることも少なくありません。恐らく一刻を争う状況の中で急いでいるのでしょうけれども、他社と比べてもはるかに速いネットワーク回線にしているわけですから、これ以上は高速にならないのですけどね……。
スーパーネオ主任:トラブルはサポートが厄介な人ほど発生します。また、厄介な人ほどPCが壊れるというジンクスもなぜか続いています。これは、本当に不思議ですが、そうなのです。
初めて情シス君:前任者が対応してくれたという理由からさまざまな要求が寄せられ、対応が追い付かない状態です。しかし、実際に前任者に確認してみると「過去に対応したことはない」ということも多く、ユーザーはあの手この手を使ってダメ元で要求してくるケースがあります。担当変更の隙間を突いて要求がエスカレートする可能性があるので、引き継ぎは極めて大事だと学びました。
旧情シス係長:LANとWANの違いを理解してもらえません。最近、働き方改革をきっかけにして社内でもいろいろな動きがあります。例えば、モバイル端末を使って社外から社内のシステムに接続する場合でも、その概念的な説明に苦労します。どこからどこへ接続して、どのコンピュータにつながって何のファイルを見ているのか、ということを順序立てて話すように意識しないといけません。
スタック先輩:デスクトップ画面がショートカットアイコンだらけで、これが何かの拍子に間違って消えてしまい、何もできずにぽかんとしてしまう人もいます。
清水:PCやインターネットが一般的になって20年近くたっていますが、この5~10年でユーザー側のITリテラシーが高くなっていることはないのでしょうか。
旧情シス係長:その人のタイプによりますね。一部のユーザーは、ITがこれからの仕事に必要になると考えて勉強するのですが、残りは従来と同じで何もしない。そうした二極化が続いていると感じています。分かりやすいマニュアルを作って配っているのですが、残念ながら全く見ない人が多いのです。「聞けば教えてくれる」と考えているのでしょう。
木村:休みの日に電話がかかってきて。「至急会社に来てくれ」などと言われることもありますか。
スーパーネオ主任:電話はたまにはありますが、なるべく外からでも監視、管理できるように環境を整えているため、会社に行かずとも何とかなります。休日に会社へ行くことはまずありません。逆に、ひとり情シスだと理解してもらっているので、なるべく電話をしないように気を使ってくれていると感じます。
スタック先輩:派遣型駐在エンジニアの時は「使用人」として扱われ、厳しい温度感がありました。休日だろうが深夜だろうが、緊急対応は少なくありませんでした。今は同じ社員同士ということもあり、周囲の方々の優しさを感じられます。ただ、本当に困っている場合は深夜でもメールが送られてくることはあります。できる範囲での対応になるのですが、会社に帰属するものとして、業績貢献の観点で緊急対応にあたります。
- 清水博(しみず・ひろし)
- 横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のディレクターを歴任する。
2015年にデルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業・中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。