日立製作所は5月28日、倉庫などでのピッキング作業で、搬送台車に積まれた商品群の中から指定の商品をスムーズに取り出す技術を開発したと発表した。
同技術により、商品の荷積み状態に基づいて、搬送台車とロボットアームが最適な速度で互いに衝突することなく近づき、搬送台車の移動を止めることなくスムーズに商品をピッキングすることが可能となる。
この技術は、ピッキング用ロボットと自律走行する搬送台車を統合制御するもので、「複数AI協調制御技術」と呼ぶ。カメラ画像から取り出す商品と、その最適なピッキング方法を判断する人工知能(AI)技術を使用して、ピッキング用ロボットを制御するAIと、搬送台車を制御するAIをリアルタイムに統合管理し、協調制御する。
ピッキング用ロボットによって搬送台車に積まれた商品を取り出す際の技術比較
同社では、搬送台車を都度停止させてからピッキングを行う従来技術と、今回の技術の比較実験を行った結果、ピッキング作業の所要時間を38%短縮できることを確認した。
リアルタイムな複数AI協調制御技術では、ピッキング用ロボットを制御するAIに対しては取り出す商品の位置情報に基づき算出したアーム動作を指示する。また、搬送台車を制御するAIに対しては現在の移動速度をもとに減速や加速を指示する。ピッキング用ロボットのAIは搬送台車の速度や位置をリアルタイムに確認し、ケースや他の商品に衝突しないようにアーム動作の微修正を行う。搬送台車の動きに合わせてロボットアームの動作を計画し、微修正する機能は、英国エディンバラ大学と共同で開発したもの。
複数AI協調制御技術のリアルタイム処理イメージ
カメラ画像から最適なピッキング方法を判断するAIは、荷積み状態に応じて変化する作業対象の商品位置や搬送台車の速度調整量など、ピッキング用ロボットと搬送台車を制御するために必要な情報を画像から解析し、判断する。事前にピッキング対象の商品の3Dデータからロボットアームによる数万通りのピッキング動作をシミュレーションし、その結果に基づき画像解析処理の教師データを自動生成し、ディープラーニングを活用した学習を行う。