今日のポイント
- イタリアの政治的混乱が世界株安の背景
- 「PIIGS危機」が再来する可能性は低い
- 株価の押し目をセクター(業種)選別の好機に
これら3点について、楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジストの香川睦氏の見解を紹介する。
イタリアの政治的混乱が世界株安の背景
今週の世界市場では、イタリアの政治的混乱を震源としたリスク回避姿勢が強まり、為替でユーロ安と円高が進行。内外株式は一時急落を余儀なくされた。
イタリアでは、3月に実施された総選挙でポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が勢力を伸ばしたものの、連立政権の樹立に失敗していまだ政権が発足していない。EU(欧州連合)批判を繰り広げる両党とマッタレッタ大統領の対立が先鋭化しており、事態収拾のため再選挙が実施される可能性が高くなっている。
隣国のスペインでも与党議員の汚職疑惑を巡り、野党がラホイ首相に対する不信任動議を提出。両国の政治的停滞は当面免れず、景気の下振れリスクだけでなく、市場は「EU離脱」をも警戒する動きとなった。
EU内で経済実態がドイツやフランスに劣後しているイタリアやスペインでは、与党や議会の親EU派が劣勢傾向となっている。緊縮財政を強いるEUに対する批判を受け、財政出動(バラマキ)を主張する反EU派が一段と勢力を増せば、EU統合維持や通貨ユーロの信認が後退することが懸念される。
今週は、イタリアやスペインの国債が売られ(利回りは上昇し)、域内の安全資産とされるドイツ国債が買われた(利回りは低下した)結果、ユーロ円の下落とドル安・円高が進み、日経平均を押し下げる展開となった(30日時点)。ただ、31日はいったん落ち着きを取り戻し、株価は反発した。
図表1:イタリア発のユーロ不安は世界に波及する?

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年5月30日)