本記事は、顧客関係管理(CRM)分野のインフルエンサーで専門家であるBrent Leary氏の寄稿によるものだ。同氏はコンサルティング会社CRM Essentialsの創業者でもある。

Amazon Echo
筆者は2014年11月に最初の「Amazon Echo」を手に入れて以来、スマートスピーカに熱を上げている。そして、それから3年半(そして4台のEcho)を経て、今ではスマートスピーカがCRM、顧客エンゲージメント、顧客体験を変容させる可能性に注目するようになった。
デジタル変革におけるもっとも破壊的な力は顧客への普及
現在進められているほとんどのデジタル変革プロジェクトでは、テクノロジを活用している顧客とのつながりを保つために、何が必要かが問題となっている。このことは小売業界でも、ほかの業界でも変わらない。最近は、現状を根本的に変える可能性を持った技術が矢継ぎ早に登場しているが、本当に破壊的変革が起きるかどうかは、その技術が顧客に大規模に、しかも速いペースで普及するかどうかにかかっている。大抵の場合、顧客が速いペースで大規模に受け入れるのは、本来楽にできるべきことを楽にしてくれる技術だ。
そして、何かを要求したり、頼んだり、思っていることを伝えたりするときに、音声を使えることほど楽なことはない。これが、これまで存在しなかったスマートスピーカ(およびその中のデジタルアシスタント)が、たった3年強で数百万軒の家庭に入り込んでしまった理由の1つだ。
スマートスピーカではない。コミュニケーションのプラットフォームだ
今ではスマートスピーカで非常に多くのことができるようになったし、実際に行われてもいるが、これはそれらのスピーカが持っている「賢さ」のおかげだ。そして、その賢さ(スピーカが繋がれているクラウド上の人工知能・機械学習プラットフォームによって提供される知性)は、多くのデバイスに広まりつつある。さらに、人間とそれらのデバイスの間のコミュニケーションが指数関数的に増えているおかげで、それらのデバイスはさらに賢くなり続けている。デバイスの有用性には、ウーハーやツイーターの数よりも、それらのコミュニケーションの方が深く関わっているのだ。
これが、AmazonやGoogleのスマートスピーカが飛ぶように売れている一方で、Appleの「HomePod」が、従来の意味でのスピーカの品質が高いにもかかわらず、人々の関心を集めるのに苦労している理由の1つだろう。人々は賢さを求めてスマートスピーカを買っているのであり、それに比べると、音の品質にはそれほどこだわっていない。しかも皮肉なことに、スピーカの音を高品質にするには、「賢さ」を追加するよりも費用がかかる。
発売当初のスマートスピーカはそれほど賢くなく、あまり多くの質問には答えられなかった。しかしいずれ、音声で尋ねるだけですぐに答えが得られるようになるという見通しがあった。それも、クリックやタイピングやスワイプなしでだ。時間が経つにつれて、スマートスピーカは実際にだんだん賢くなり、できることが増えたのを実感できるようになった。また筆者は、時間が経つにつれて、自分がスピーカを使って質問をしたり、何かをしたりすることが多くなってきたのに気づいた。
重要なのは、スマートスピーカは拡大を続けるネットワーク接続デバイスのスマートエコシステムの一部を構成しており、今後、ユーザーが楽をできるようにするために設計されるものは、何でも音声で使えるようになるということだ。それが実現すれば、それらのデバイスを通じて、顧客と企業のコミュニケーションは増えていく。