生産性向上に取り組む受託開発などを手がけるソフト開発会社は少なくない。問題は、人の数に依存しないビジネスモデルに転換できるかだ。労務費と外注費比が7割から8割を占める人月ビジネスからの脱却ともいえる。
意欲的に挑戦する1社が、中堅SIerのシーイーシー（CEC）だ。同社の田原富士夫社長は2018年1月期の決算説明会で、2021年1月期に経常利益を2.2倍に伸ばす新しい中期経営計画を発表した。目的の１つは、年収アップによる人材の確保と育成を容易にすること。そのため、人月ビジネスから製品・サービス販売への事業構造変革を加速させるという。
カギは自社商品やソリューションの創出に
CECの2018年1月期の売上高は前年同期比4.6％増の459億9400万円、経常利益は同11.7％増の38億1900万円となり、経常利益率は業界平均を約2ポンイト上回る8.3％を達成した。それを、2021年1月期に売上高545億円、経常利益55億円、経常利益率10.1％するのが新中計だ。田原社長は「人手に頼らない事業に改革していくこと」とし、従業員を現在の約2300人を維持し、目標数値を達成する考えを明かす。
そのカギを握るのが、新しい製品やサービスの創出になる。過去3年間で46の製品とサービスを生み出し、数十億円の売り上げ規模に成長し、業績に寄与したという。たとえば、組み込みソフト開発などの品質向上を支援するソフト開発統合プラットフォームや、インダストリアル・エンジニアリング分析に必要な作業動態分析を効率化するソリューションだ。顔認証や静脈認証などセキュリティ・ソリューションも商品化する。
実は、田原社長は3年前から受託開発ビジネス中心による継続的な事業拡大を困難と思っていた。エンジニアの稼働率改善は難しく、他社との差別化も難しい、などからだ。そこで、強みのある分野にリソースを集中し、エンジニアの数に依存しないビジネスモデルへの転換を、2016年1月期からの中計に盛り込んだ。だが、変革スピードは少し遅れているように思える。前中計で打ち出した2021年1月期の売り上げは700億円、経常利益70億円だったのに、新中計の目標値は売り上げ、利益とも下げた。ただし、利益率は10％を堅持する。
変革スピードの遅れは、新製品の貢献度が低かったことが１つ挙げられるだろう。結果、売り上げの約4割を占めるシステムインテグレーション（SI）事業に業績は影響される。そのため、2018年に組織を再編成した。SI、組立て製造業向け製品とサービスのインダストリーオートメーション、ITインフラなどを提供するプラットフォームインテグレーションの3事業を、製造業に製品とサービスを提供するデジタルインダストリーと、製造業以外のアプリ開発から構築・運用まで手掛けるサービスインテグレーションの2事業にした。SIを2つの事業に組み込んだのは、おそらくシステムをライフサイクルでとらえるためだろう。単価の安い案件を請け負わないなど、どんな生産性向上を図るのかにも注目したい。
