ユーザーメリットの追求
クラウドの普及によって、ユーザーはIT資産を所有せずに利用するというスタイルを選択できるようになった。この新たなトレンドは、オンプレミス環境を対象とした機器販売を中核ビジネスとしていたエンタープライズターゲットのITベンダー各社にインパクトを与えているが、Pure Storageでは新たに「Pure Evergreen Storage Service(ES2)」を発表し、“ストレージコストのOPEX化”を確実なものとした。
リース税制の変更によって、リース資産をバランスシートに記載する義務が生じることから、従来のリースでは資産をオフバランス化できなくなる見込みだが、ES2では、ストレージをリースではなく「Storage as a Service」として利用することで、新税制下でも完全にオフバランス状態を維持し、OPEXとして処理できるようにする。
このコンセプトはシンプルで、ユーザーのデータセンターなどにストレージを設置/運用する場合でも、その所有権と運用管理の責任はPure Storage側が持ち、ユーザーはサービスとしてストレージを利用するというモデルだ。このためユーザー側では、ストレージのサイジングについて決定権はなく、Pure Storage側で適切な容量を適切に運用するとされる。使用量を見ながら適宜調整するが、使用量に対する余裕をどのくらい確保するのかはPure Storage側が決め、ユーザー側で「心配だからもっと余裕をたくさん確保しておいてくれ」と注文をつけることはできないという程度の意味だという。
ストレージコストのOPEX化という意味では、クラウドサービスを利用すれば、それで済む場合が大半だろうが、データの価値に改めて注目が集まる現在、企業の中にはどうしても外部に出したくないデータもあるだろう。こうしたデータを格納するためのストレージをオフバランスで運用するためには、ES2はよい選択となり得るだろう。
Pure Storageが目指すもの
Pure//Accelerate 2018で、筆者が一番に印象を感じたのは、一連の新製品や新サービス、新アーキテクチャよりも、基調講演の中で最高経営責任者(CEO)のCharlie Giancarlo氏が同社の社員のことを「Puritans(ピューリタン)」と呼んだことだった。その意図について特段の説明はなかったので、単に「Pureに集まった人たち」程度の語呂合わせ的な意味でしかない可能性もあるが、世界史に基づいて考えれば、英国のキリスト教の改革を唱え、17世紀の清教徒革命を担い、“Pilgrim Fathers”として米国最初の移住者となった人々のことが思い浮かぶ。日本人であれば“ピューリタン”という言葉に、「行動的な理想主義者」といったイメージを抱く人が多いのではないだろうか。

Pure Storageはストレージベンチャーながら、オールフラッシュという技術だけでなく、ストレージ自体の新たな意義を提示する
オールフラッシュ・ストレージが市場に投入された当時は、続々と出現した新興ストレージベンダーが既存ベンダーを脅かす存在になるとも思われたが、実際には既存ベンダーが迅速にフラッシュ対応を進めたこともあって、市場でのベンダーの顔ぶれはさほど大きくは変わっていない。ストレージメディアとしてフラッシュを活用することがごく当たり前になり、エンタープライズ市場では、むしろHDDの方が特別な存在と見なされるようになりつつある現在、オールフラッシュというだけではベンダーが生き残れないのは間違いないだろう。
Pure Storageは、単にオールフラッシュ・ストレージのパフォーマンスのみに頼るのではなく、ユーザーの利便性にも着目し、さらに将来的な「より効率的なデータ活用を実現するためのプラットフォーム」を実現することを真剣に追求してきたようにも見える。こうした取り組みが同社の“ピューリタニズム”に起因するものであるのだとすれば、今後もますます過激なまでの理想主義に基づいた革新的な施策を打ち出してくるのかもしれない。
AIブームとも言える状況によって、ストレージがITの主役に近い地位に躍り出た感があるが、この分野でPure Storageが今後どのような動きを見せるのかが楽しみでもある。