アドビ、電子サインサービスでアットホームと提携−−国内不動産市場向け

渡邉利和 2018年06月07日 12時32分

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 アドビシステムズは6月4日、国内不動産会社向けの電子サインサービスの利用拡大を目指し、不動産情報サービスのアットホーム株式会社と業務提携したと発表した。この提携に基づき、アットホームは同社の加盟店に対する電子サインサービス「スマート契約」の提供を6月1日から開始している。

 働き方改革が社会全体の課題として注目される中、不動産業界でもITを活用した業務効率化を目指す意識が高まっているという。中でも、関与する利害関係者も多いことから取り交わされる契約書も膨大に上る不動産業界では、契約書の電子化のメリットも大きいものと見なされている。

アットホーム株式会社
執行役員
基幹事業部門
副部門長
大保 幹彦氏
アットホーム株式会社 執行役員 基幹事業部門 副部門長 大保 幹彦氏

 今回の提携によって、アドビのクラウドベースのドキュメント管理ソリューション「Adobe Document Cloud」の電子サインソリューションである「Adobe Sign」がスマート契約で活用されることで、アットホームが提供する「アットホーム不動産情報ネットワーク」の加盟/利用不動産店(5万4000軒以上)が、賃貸物件の契約・更新・解約などのさまざまな業務を電子サインで実施できるようになる。

 アットホームの執行役員 基幹事業部門 副部門長の大保 幹彦氏はAdobe Signの採用理由について「文書やワークフローの電子化についてはPDFの開発元として豊富な実績があることも大きい。Adobe Sign自体の機能/性能に加え、文書電子化ソリューション全般に渡る取り組みを総合的に評価して今回の採用に至った」と語る。

 一般的な賃貸契約の場合、不動産の所有者(いわゆる大家さん、貸し主)、不動産の管理を担当する不動産屋(元付け業者/管理会社などと呼ぶ)、借り手を集める不動産会社(客付け業者/仲介業者などと呼ぶ)、借り手(いわゆる店子)という4者が介在することになる。元付けと客付けが同一である場合もあり得るが、一般的には元付けと客付けのどちらに注力しているかが不動産業者によって異なるという事情もあり、それぞれ別の業者となる例が一般的だという。

 さらに、賃貸契約の他にも、物件によっては警備や清掃、建物の修繕といった業務でそれぞれ外部の事業者が関わってくる場合がある。膨大な量の契約書が取り交わされているというのはそういう事情である。

 アットホームは、消費者(借り手)向けの不動産検索サイトの運営も行なってはいるが、業務の中核は不動産会社間の情報流通の支援サービスであり、端的に言えば、元付けと客付けの間の情報流通の仕組みを作り、提供している会社だという。そのため、今回のAdobe Signの提供も同社のサービスを活用する不動産会社向けに提供される機能と位置づけられている。

 同社のサービスを利用している不動産会社が業務効率化の一環として契約業務の電子化に取り組む場合に活用可能なサービスの1つとしての提供であり、その利用の仕方も不動産会社側の判断に任されている形なので、まずは不動産会社間のB2Bの世界から活用が始まってくると予想されているが、不動産会社の取り組み状況や市場動向によっては、借り手となる消費者が完全に電子化された賃貸契約を電子サインをつかって締結するというスタイルが普及していく可能性ももちろんある。

アットホーム株式会社
基幹サービス開発部
部長
原 雅史氏
アットホーム株式会社 基幹サービス開発部 部長 原 雅史氏

 アットホーム株式会社 基幹サービス開発部 部長の原 雅史氏は、今後の電子サイン活用拡大に向けた取り組みについて、「書面の取り交わしが必須とされている場面もまだまだ多い中で、我々が取り組むべきなのは電子サインが活用できる場を少しずつ増やしていくことだ。たとえば、一度賃貸契約が成立した後で発生する更新手続きや解約、あるいは修繕などの業者間取引の場などで使えるような環境を整えていく。契約書の種類や数が多いのはやはり元付け事業者側なので、まずはそちらでの利用シーン拡大に取り組んでいきたい」と語る。

 現状はまず認知拡大に取り組むところから、という段階との認識だ。一方、現状でも多くの不動産会社では契約書の原本を電子的に作成し、保存もデジタルデータとして保存すると言った形での業務のデジタル化に取り組んでいるようだが、最終的な契約書のやりとりの段階ではプリントアウトしたものに署名捺印を、という昔ながらの手法が残っている。

 これを完全に電子化するのは法制度面での対応や社会的な認知の拡大なども必要であり、一足飛びに実現できるわけではないが、電子情報の活用は業種業態を問わず社会的な課題となりつつあると同時に、一度利便性が認知されればそれこそ契約に関わる事業者間で芋づる式に採用が拡大していくことが期待されるため、本格的な活用拡大は意外に早いタイミングで実現する可能性がありそうだ。

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