本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、テラスカイの佐藤秀哉 代表取締役社長と、米TeradataのOliver Ratzesberger COOの発言を紹介する。
「もっと人材がいれば業績をさらに大きく伸ばせるのだが……」
(テラスカイ 佐藤秀哉 代表取締役社長)
テラスカイの佐藤秀哉 代表取締役社長
テラスカイが先頃、今後の事業戦略について記者説明会を開いた。佐藤氏の冒頭の発言はその会見で、クラウドインテグレーション事業の現状について語ったものである。
テラスカイは2006年の創業以来、クラウドを活用したシステム開発の支援を中心に事業を展開。Salesforce.comのコンサルティングパートナーとして、同社のクラウドサービスの豊富な導入実績を持ち、資本提携も行っている。また、2013年からはAmazon Web Services(AWS)関連サービスの導入支援も手掛けており、専業のクラウドインテグレーターとしては国内最大手の存在となっている。
売上高は2018年2月期で48億6400万円。創業以来、前期比30%増ペースで伸びてきており、2019年2月期は同39%増の67億7700万円、2020年2月期には100億円超えとともに現在6%台の売上高経常利益率を10%以上に引き上げたいとしている。(図参照)
図:今後の投資に対する考え方。現在進行中の2019年2月期が「現在、ここ3年」の最終年にあたる(出典:テラスカイの会見資料)
そのための重点施策となるのが、「研究開発の強化」「mitocoの事業拡大」「次世代コンタクトセンター向け事業の強化」などだ。佐藤氏によると、研究開発の強化ではこれまで分散していた組織を集約し、機械学習、RPA(Robotic Process Automation)、IoT、量子コンピュータなどをテーマに取り組んでいく構え。また、自社開発のコミュニケーションプラットフォーム「mitoco」については、「商品化して2年経ち、売れ始めてきた」(佐藤氏)ことから、さらに注力していくという。(発表資料参照)
それにしても、これまでの同社の順調な成長ぶりを見ると、後からクラウドインテグレーターを目指す会社も続いているだろうと思い、「そうした会社にアドバイスを」と会見の質疑応答で聞いてみた。すると、佐藤氏は意外にもこう答えた。
「アドバイスはできない。というのは、当社が成長できたのは、時流に乗れたからだ。創業時、Salesforceのサービスを扱えるインテグレーターはほとんどなく、まさにSalesforceの勢いとともに事業が拡大した。その後、AWSのサービスも手掛けたが状況は同じだ。仕事はひっきりなしにある。もし、もっと人材がいれば業績をさらに大きく伸ばせるのだが……。ただ、今、クラウドインテグレーターに参入しても時流に乗れるかどうか分からない。あえてアドバイスするなら、次のパラダイムシフトを狙うべきでは、と申し上げておきたい」
冒頭の発言はこのコメントの一部を抜粋したものである。「人材がいれば……」と幾度か話していたのが印象的だった。まさしく佐藤氏の本音だろう。