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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

「起立!」「着席!」で出席数を顔認証カウントする最新学校事情

山谷剛史

2018-06-12 08:01

 「起立!」――クラス委員の声に教室で全員が起立し数秒後、「着席!」の声とともに座る。立っている数秒間に3つのカメラが出席者の顔認識を行い、全員の出席確認を完了する。最新IT技術を導入する浙江省杭州市拱墅区にある杭州第十一中学の朝の光景だ(中国で「中学」は日本でいう「中学」と「高校」を意味する)。顔認証システムは3月より同学校の高1と高3のそれぞれ1クラスでテスト運用されている。

 同校への顔認証システムの導入は出席確認に限らない。顔認証により、自動販売機での購入や、本の貸し出しや、学生食堂での食事のオーダーも利用できる。さらに各人の食事のオーダーの履歴を分析したうえで、微信(WeChat)の公式アカウント「微信公衆号」ないしは専用端末を使い、クラスの生徒とその家族限定で、各生徒の栄養バランス状況について確認できる。顔認証システム導入により本来カードを使っていた校内での「カードレス」を実現したという。

 杭州市第十一中学のオフィシャルページでは、この顔認証システムこと「智慧課堂行為管理系統(スマート教室行為管理システム)」についての導入情報を中国語だけではあるが公開している。有力な華東師範大学教授で中国政府教育部(省)教育情報化の専門家である任友群氏や、全国政協委員で上海市教育委員会副主任の倪min景氏がシステムについてコメントしているあたり、政府のお墨付きのプロジェクトだ。

 教室内で「智慧課堂行為管理系統」は常に全生徒の動きを監視し、「異常行為」とシステムが認識したら教師に情報が送られる。具体的には30秒ごとに黒板の上に設置されたカメラが教室全体を1回撮影し、生徒それぞれの状態を「本に向かっている」「手を挙げる」「ノートに書く」「起立する」「話を聞く」「集中していない状態となっている」の6種類のいずれかに認識する。

 加えて生徒それぞれの顔を認識して「楽しい」「悲しい」「怒っている」「反感」などの表情を認識する。このふたつの認識の組み合わせにより、学生の授業状態を科学的に分析する。「集中していない状態」というマイナス認識が一定回数を超えると、教師にシステムがアラート情報を送る。補足すれば「智慧課堂行為管理系統」は休み時間や体育の授業は情報をとらず、教師だけが見られる状態となっているが、保健室にも適応されるという。

 ニュースにも取り上げられて、特に教室内の採用に賛否両論となった。学校側も「学校が監獄化する」といった否定側の意見をくるのはわかっていて進めている。個人情報漏洩の心配が出るのも想定済みだ。そこで保護者に情報採集の同意を得る。また各カメラユニットで情報を個人情報として使えない状態まで加工する。すなわち画像データから分析した「誰が手を挙げて集中している」という記号だけをサーバに送り、サーバが顔画像を受け取れなくするとした。またクラウドサービスではなく、ローカルなシステムとして完結している。

 プラス面として、導入により教師の負担減が期待できる点が挙げられる。小学校から科目ごとに担当の教師が異なるので、中学内の他教師との気になる生徒についての教え方について情報交換でき、引いては教育のクオリティの向上が期待できる。教師や教師の授業のクオリティは各教師の個性、もっといえば職人気質の経験に依存するところがあり、”空気が読めない”教師にとって、生徒の授業態度のデータ化は福音となろう。

 学校での顔認証システムの導入は「駄目な人間をピックアップし通報するための監視」と「退屈になった人を退屈させないためのサービス向上目的」などの解釈があるが、後者ととらえれば、例えば映画館や遊園地のアトラクションでのカードレスの入場に加え、利用者の反応分析など、さまざまな分野で応用できそうだ。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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