海外コメンタリー

ビジネスアナリティクスの進化:データ駆動による意思決定の本質とは - (page 5)

George Anadiotis (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-07-12 06:30

 膨大な量のデータを見渡せれば、興味深いものごとが可能になる。「意思決定をサポートするためのエビデンスとなるデータ」という考え方を覚えているだろうか?人間の意思決定とデータ駆動型意思決定の類似点を詳細に見ていく前に、多くのプロジェクトを手がけ、何らかの分野における豊富な経験を身に付けた専門家について考えてみよう。

Gartner
Gartnerの提唱するアナリティクスの成熟モデルは、AIへの移行に際する説明や準備のための優れた手掛かりとなる。
提供:Gartner

 これは、野球の試合で次にどのようなプレイが展開されるのかを知っているかのような動きを見せる選手、あるいは市場で次にどのような競争が巻き起こるのかを事前に予見しているアナリストのようなものだ。高いレベルのスキルや経験を身に付けた専門家は、次に起こることをあらかじめ分かっているかのような振る舞いを見せる場合もしばしばある。実際のところ彼らが行っているのは、自身の経験に基づく、理にかなった予測や推測なのだ。予測分析もこれと同じだ。

 予測分析とは、過去のデータに基づいて次に起こる事象を予測するというものだ。次月の売り上げはどうなるのだろうか?どの顧客がサブスクリプションをやめようとしているのだろうか?どのトランザクションが不正行為に関連していそうなのだろうか?どの商品がユーザーの心を捉えるのだろうか?予測分析が答えようとしているのは、この種の疑問だ。

 その答えを求めるのは簡単ではない。どういったパラメータが関与するのかを見極めるだけでも一筋縄ではいかない。ましてやパラメータ間の関係を見つけ出し、それを表現するアルゴリズムを考え出すのはとても困難な作業となる。その結果、手続き的なプログラム形式でこの種の疑問を取り扱うことが至難の業となってしまうわけだ。

 しかし、時間をかけて累積したデータを何らかのかたちで再利用し、これら疑問の答えを比較的正確に予測する際に活用できるパターンを洗い出せるとしたらどうだろうか?まさにこれこそが、予測分析台頭の立役者とも言えるMLの背後にある考え方なのだ。

 MLは新しいアプローチというわけではない。目覚ましい進歩を見せたのはここ数年だが、基となる技術の大半は数十年も前からある。しかし今日のわれわれは、周辺環境の変化に伴って、ML技術を用いたアプローチを採れるだけの十分なデータ量とコンピュート能力を手にしている。

 MLを適切に機能させるには、蓄積したデータと人間の作業、専門性を協調させるのが重要であるとともに、大量の計算資源も必要となる。データは収集の後、その品質を査定、分類したうえで、適切なMLアルゴリズムを正しい方法で適用していく必要がある。このようなプロセスはアルゴリズムのトレーニングと呼ばれており、それを遂行できるだけの緻密なスキルを会得している人材は現時点では極めて少ない。

 しかし、うまく機能すればその結果は驚くべきものとなる。MLは不正行為の検出からヘルスケアに至るまでのさまざまな分野での利用が増えており、人間の専門家に勝るとも劣らない成果を上げている。一部の人たちがこういったアプローチをAIと呼んでいるのも十分うなずける話だ。

 AIの定義はこの記事で取り扱うには大きすぎるが、アナリティクスの次の(または最終的な)進化段階を考察するうえで興味深い、ある観点と関係している。その観点とは処方的アナリティクスだ。処方的アナリティクスとは、ある種の望ましい成果を引き起こすための分析だ。

 上述した野球の例に従うと、処方的アナリティクスは、コーチが試合前のチームミーティングでホワイトボードを使って勝利に向けた戦略を説明する、あるいは企業のストラテジストが自社グループの影響力を最大化するための計画を考え出すようなものだ。予測分析との違いは明確ではないとはいえ、ほとんどの企業にとってそれはささいな問題であり、あまり重要ではない。

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