「ひとり情シス」の本当のところ

第7回:“ふたり情シス”の行く末--新人教育を成功させるには

清水博 (デル) 2018年06月18日 07時00分

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急な旅行に最適な人数

 もうかなり昔、私の少年時代の話ですが、大人になって旅行に行くときには「奇数の人数で行くべし」と言われていました。二人だと行先を決める際に意見が分かれてしまい、お互いの主張が繰り返されるばかり。平等に多数決で決めるというわけにもいきません。筆者の実体験では、あまりこのような場面に遭遇しなかったため、単なる都市伝説かもしれませんが、まことしやかに語られていました。

 最近の若者は、スマートフォンやSNSを使っていつでも情報を入手できます。昔の青春ドラマのように、行き当たりばったりな状況に陥ることもないでしょう。事前に周到な準備を整えた上で、何かあってもメッセンジャーなどですぐに連絡が取れます。余計な心配は無用かもしれません。実際、20代の社員に話を聞いてみると、協調性を重んじ、自己主張が控えめです。そういう意味でも、前述の「奇数の人数で行くべし」という言葉は死語になっているのかもしれません。

二人で運営する難しさ

 それでは、情報システム部門に目を向けてみましょう。情報システムを二人で運用している場合、今後のIT戦略の方向性や製品/ベンダー選定、運用方針など、二者択一の状況になることも多く、議論は尽きません。さらに、双方の価値観や出身母体の違い、プロジェクト実績の有無といった点からも、コンセンサスを得ることは容易ではありません。

 その結果、行き場のない議論になるだけで、二人の関係が悪化してしまうことも少なくありません。そして、そこから排他的な感情が強くなっていき、「最初は二人だったのですが、今は一人です」と打ち明けるひとり情シスの担当者もいます。

獅子の子落とし

 もう一つのストーリーは、さらに悲惨な話です。「いずれスタッフを増員したい」と考える担当者は少なくありません。しかし、中堅中小企業において、一人採用することは大きな意思決定です。社長や役員に増員の重要性を何年もかけてアピールし、ようやく採用が始まります。さらに、人件費の確保のみならず、企業文化に合うかどうかといった点でも、大企業よりチェックが厳しいという現実があります。

 将来の情報システム部門を担う人材として採用するため、比較的若い世代が望まれます。40代の中堅社員と20代の若手社員のコンビがよくあるパターンです。20歳ほどの年齢差があるため、最初は手取り足取り教えるのですが、世代間のギャップを少しずつ感じるようになります。

 例えば、残業に対する考え方や有休休暇の取り方など、ちょっとしたところに認識の違いが存在します。新人は悪気なく質問しているつもりでも、度重なる質問に嫌気が差し、ついには「自分で調べろ!」などと突き放されてしまいます。「獅子は自分の子を深い谷に投げ落として、這い上がってくる者のみ育てる」という俗信もあるほどです。

 ここで頑張って知識や技術を身に付けて這い上がれればいいのですが、二回りも年の差がある新人と価値観を共有するのはとても難しいかもしれません。そして、「戦力外」と見なされ放置された新人は、外の世界にキャリアを求め始めます。結果として、ひとり情シスに逆戻りという悲しい話を聞きます。

 これはとても難しい議論で、双方に確固たる主張はあると思います。やはり、会社員としては、自分で気付きを得て、それに対する努力が必要であることは否定できません。しかし、IT人材の不足が叫ばれる昨今、人を育てるとなると、従来の考えでは及ばないことも出てくるかもしれません。その点を十分に考えた上で、ひとり情シスの担当者は二人目を迎える必要があるのではないでしょうか。

清水博(しみず・ひろし)
清水博氏
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のディレクターを歴任する。

2015年にデルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業・中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。

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