「トイレの便器に資産管理マークがついているのに、情報については管理しようという発想がない」
こう話すのは、ガートナーのリサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストのDouglas Laney氏。インフォメーションエコノミクスを短くした「インフォノミクス」という概念を立ち上げた。情報を資産として管理し、そこから収益化を図っていくという意図がある。
米国版100円ショップとも言えるDollar Centralは、ショップの在庫データをサプライヤーに販売するモデルを構築。1年間で売り上げが1億ドルも上がったという。
ガートナーのリサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストのDouglas Laney氏
オレンジジュースで有名なMinute Maidは、オレンジの仕入れ先が異なるために、季節や地域によってジュースの味が違うという課題を抱えていた。そこで、データを分析することで、味がばらつく原因を探った。霜が降りることや台風など、さまざまな要因を分析することで、仕入れを工夫し、味に一貫性を持たせられるようになった。
企業が、保有するデータを資産として管理し、収益化できるように生かしていく――インフォノミクスの発想はもちろん以前からあったが、質量がないなど情報という資源の特性もあり、企業会計でも適正に評価されてこなかった。
Laney氏は、状況は変わりつつあるとし、「5~10年先には国際会計基準も、情報の資産価値を考慮するように見直されるだろう」と話している。そうなることによる会計的な影響として「貸借対照表における簿価と時価の乖離(かいり)が埋まるかもしれない」とコメントした。
具体的な進め方
情報を資産として管理し、収益化するという取り組みを、企業はどのように実践すればいいのか。
典型的な意味でリーダーとなり得るのは、CDO(Chief DigitalもしくはData Officer)だ。リーダーは、データを活用して収益化を図っている例について、同業種だけでなく、異なる業種も含めて見た方がいいという。
情報から経済的なメリットを創出する方法は、直接的なものと間接的なものに分かれる。直接的なものとしては、情報を交換/取引する、情報で強化された製品サービスを扱う、ブローカーを通じて未加工のデータを販売するなど。間接的なものとしては、データを使って効率化する、データを生かして新製品や新市場を開発する、データを用いてパートナーとの関係を構築、強化するなどが考えられる。
障壁があるとすれば、文化だという。情報はリソースでしかないという根強い考え方や、ビジネスの副産物という見方など。情報を資産として扱うための役割や責任を定義しないといけないとLaney氏は話している。