モノ・サービス・場所などを、ITを活用して多くの人と共有・交換して利用する「シェアリングエコノミー」が注目を集めている。そこで本連載では、シェアリングエコノミーが経済社会にもたらす影響を探ってみたい。初回はまず、シェリングエコノミーの概要を紹介する。
シェアリングエコノミーは「デジタルエコノミー」
本連載を始めるにあたり、まずは筆者の思いを述べておきたい。実は、シェアリングエコノミーについては、別のコラム連載で「シェアリングエコノミーでどんな社会を目指すのか」と題して今年初(2018年1月4日掲載)に取り上げた。同コラムの最初にも書いたが、「これから社会を大きく変える動き」だと思ったからである。
その後、ライドシェア(車の相乗り)や民泊仲介をはじめとしたサービスをめぐる動きがますます活発になり、メディアでも話題に上ることが一段と多くなった。そもそもなぜ今、シェアリングエコノミーが注目されるようになってきたのか。そこには、経済社会の変化とともにITの進展も大いに関係している。シェアリングエコノミーは「デジタルエコノミー」でもあるわけだ。
そこで本連載では、そうしたシェアリングエコノミーに関するさまざまな動きやこの分野に詳しい専門家の見方を紹介し、シェアリングエコノミーが経済社会にもたらす影響を探っていきたい。私たちが考えている以上に影響が大きいのではないか。新たなパラダイムシフトの予感がする ―― これが筆者の本連載に向けた最大の動機である。
さて、初回はシェアリングエコノミーの概要について、総務省の「平成29年版 情報通信白書」および矢野経済研究所の「国内シェアリングエコノミー市場調査」の内容を基に紹介しておこう。
まずは、シェアリングエコノミーの定義を明確にしておく。情報通信白書によると、「個人等が保有する活用可能な資産等を、インターネットを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」としている。ここで「活動可能な資産等」の中には、スキルや時間などの無形のものも含まれる。
シェアリングエコノミーは個人や社会に対して新たな価値を提供し、経済の活性化や国民生活の利便性向上に資することが期待されるとともに、これを活用することで、遊休資産の有効活用および社会課題への寄与が期待され、国内でのシェアリングエコノミー市場の規模も拡大傾向にある。その市場規模については、矢野経済研究所の調査によると、2016年度で前年度比26.6%増の503億4000万円。2021年度には2016年度比2.1倍の1070億000万円に拡大する見通しだ。

シェアリングエコノミーの国内市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所の調査)
ちなみに矢野経済研究所の調査では、シェアリングエコノミーを「不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有できる場を提供するサービス」と定義している。ただし、音楽や映像のような著作物は共有物の対象にしていない。
シェアリングエコノミーをサービスと捉えることにより、その市場規模を、サービス提供事業者のマッチング手数料や販売手数料、月会費、その他サービス収入などのサービス提供事業者による売上高ベースで算出している。