田中克己「2020年のIT企業」

野村総研の此本社長の戦略--「DX時代に応えるIT企業に」

田中克己 2018年06月26日 07時00分

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 野村総合研究所(NRI)は、2019年度からスタートする中期経営計画(中計)の作成を開始した。此本臣吾社長は「ユーザーのビジネスを、ITを使って変えること」と、ポイントを明かす。これまでの証券会社向けSTARのような共同利用型(ASP)とアウトソース事業に加えて、ユーザーが取り組むデジタル化によるイノベーション支援のビジネスに力を注ぐ考えだ。

 2018年1月には、工作機械のDMG森精機とデジタル技術を用いて、工場などの生産設備の高度活用を支援するサービス会社を共同で設立した。こうしたデジタル・カンパニーへ変身する企業が増える中で、IT企業はどんなビジネスを展開していくのか。NRIの戦略から明日のIT企業像がみえてくる。

此本臣吾社長
此本臣吾社長

--2022年度に営業利益1000億円などの中計目標を達成するには、7000億円弱の売り上げを確保する必要がある。

 確かに7000億円弱のイメージだ。2018年度の売り上げ見込みは約5100億円なので、2000億円増やすことになる。実は、4年前の中計で、セグメントごとの成長ストリーを作り、1000億円を外部成長で達成するゆるやかなイメージをもっている。(2016年12月に完全子会社化した)オーストラリアのASGグループの売り上げは2016年6月期の約150億円から400億円規模にきている。このような産業分野のグローバル化は進んでいるが、金融分野のグローバル化の成果が現れてない。なんらかの手を打ち、1000億はグローバル中心にM&Aで作る。現在、2019年度から始める中期で具体化する。簡単ではない目標だが、できないことはないと思っている。

--残りの1000億円は国内になるということか。

 国内の情報サービス市場は約13兆円の規模。その中で、NRIの売り上げは数千億円なので、伸びしろはまだまだあるといえる。国内市場の成長率は1〜2%に対して、10%は難しいが、1ケタ台半ばの成長をさせたい。同業をM&Aするより、ユーザーとの共同ビジネスが増えるだろう。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)などによる新しいビジネスモデルを一緒に作ることだ。そこにメジャー出資することもあるし、マイナー出資のこともある。例えば、モノ作り企業がデジタルを使って、顧客企業とダイレクトなタッチポイントを作る会社をジョイントで作るとかだ。

--スタートアップへ資本参加はするのか。

 NRIは小回りが効かないので、ユニークな技術やビジネスモデルを持っているスタートアップに出資し、緩やかなNRIグループを形成する。すでに(鹿児島銀行らと設立した)サザンウィッシュなど10社程度に出資しているが、さらに増えるだろう。すべてを自分だけでやるのは難しいし、コスト的にペイしないこともある。

ユーザーのトップラインを伸ばす支援

--NRI自身は、新しいことにチャレンジしているのか。

 例えば、JALの「どこかにマイル」だ。どこに行けるのか分からないミステリツアーで、申し込んでから数日後に行き先が決まるもの。通常は往復1万2000ポイントのところを、半分の6000ポイントでいける。そのビジネスモデルとシステムを使った利用料をもらう仕組みだ。こうしたビジネスIT(BIT)と呼ぶ領域は、ユーザーの重要な施策になる。デジタルを取り入れて、顧客のロイヤリティを高めるCX(顧客体験)は有効な方法になる。

 そういったことをしたいと考えるユーザーは多い。ユーザーのトップラインを伸ばす施策を支援するものになる。ただし、ビジネス規模は基幹ビジネスのように大きくはなく、案件1つ1つを取るのが目的ではない。顧客との信頼関係を確固たるものにし、ビジネスを太くすることにある。こうしたITを使った攻めの投資に応えられる能力を持っているのが、当社の強みだ。

--NRIはASPとアウトソースで、ビジネスを大きく伸ばしてきた。

 それに新しいものを加えた。

 また、競争が厳しくなり、ユーザーはアウトソースに対する根強いニーズがある。所有から利用へとコストパフォーマンスの良いASPに切り替えるユーザーも少なくない。その傾向はますます強まる。特に証券会社向けASP(STAR)のシェアは高い。金融のバックオフィスは法律で決められているので、同じものを使う合理性がある。だが、金融以外のASPは作れない。作っても、カスタマイズになるので、ASPの形にはならない。たとえば、自動車はメーカーごとに仕組みが異なるだろう。

--NRIが目指すIT企業の姿とは。

 ここ数年で大きく変わってきた。これまでバックオフィス業務をITで効率化するもので、IT部門が担ってきた。そこでは、ビジネス部門はITに縁がなかったが、ITを使ってビジネスを作るようになってきた。例えば、ゴールドマン・サックスはテクノロジーカンパニーといっている。そんな方向に、多くの企業が進むだろう。つまり、ユーザーのビジネスをITで、どう変えるかと、範囲が広がり、中身が変わってきた。私が意識しているのは、アクセンチュアだ。ITとビジネスコンサルティングに強みがあり、利益率20%超を出し、2ケタ成長を遂げている、すごい会社だ。足下にもおよばないが、目指すビジネスになる。

--それに応えるには、今のスキルで十分なのか。

 BITに求められるスキルセットは異なる。基幹システムは安心、安全に作るためのプロマネのスキルだ。巨大なプロジェクト構築力とは違った、AIやアナリティクス、クラウド運用などの技術力が勝負になる。こうした人材を育成していくために、2018年にアナリティクスなどの資格認定制度を作ったり、AIエンジニアを育成するAIテックラボを設置したりした。ただし、デジタル化したいユーザーのニーズに応える業界側のリソースは足りない。日本企業の投資する余力は十分にあるが、それを支える供給力が不足している。

 

--海外に人材を求める手はないのか。

 現在、中国のオフショアを使っている。そこは、プログラミングやコーディングで、ウォーターフォール型開発における作業分担になる。しかし、BITは試行錯誤しながら、ビジネスとITが一体でサービスを作りだすもの。いわばアジャイル開発なので、データのクレンジングに失敗しているとか、アルゴリズムに問題があるとか、臨機応援に対応することが求められる。なので、海外パートナーを使うのは簡単ではない。むしろ国内のパートナーをもっと巻き込む必要がある。だが、パートナー各社も人手不足の状況である。

--人材採用は増やすのか。

 国内のオーガニック事業は、2ケタは伸びないが、生産性向上などもあり、毎年400人弱の新卒採用している。今年は374人の新卒を採用した。グローバルでは、たとえばオーストラリアの子会社が2000人になる。7000億円弱になったら、従業員は2万人近くになっているだろう。

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