Gartner Summit

従来型BIからモダンBIへの移行が進んでいる--ガートナー堀内氏

日川佳三

2018-07-06 08:48

 6月14日、「ガートナー データ&アナリティクスサミット2018」のセッションの1つとして、ガートナーのリサーチ部門でマネージングバイスプレジデントを務める堀内秀明氏が登壇。「BI近代化実現のポイント」と題して講演した。

 BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトウェアの導入が進んでいる。ガートナーが2016年11月に実施した市場調査「ITデマンド・リサーチ」によると、2000人以上の大企業の80%がBIソフトを利用中または導入中だ。2007年の53%、2010年の61%、2013年の70%と、順調に伸びてきている。

ガートナーのリサーチ部門でマネージングバイスプレジデントを務める堀内秀明氏
ガートナーのリサーチ部門でマネージングバイスプレジデントを務める堀内秀明氏

 しかし、調査では別の側面も見えている、と堀内氏は指摘する。BIを導入しても、BIによって成功を勝ち取った企業は少ない。「期待以上の成功」(1%)と「期待通りの成功」(9%)を合わせて、成功している企業は10%しかいない。

 従来型BIの課題について堀内氏は、「当初のユーザー要件から外れたデータについては、活用するのが難しい」と指摘。要件の追加や変更に対しては追加開発で対応することになり、相応の時間を要する。この結果、エンドユーザーは、個別にデータを入手してExcelで加工することが増える。

 従来型BIの課題を克服するため、市場の主役は、従来型BIからモダンBIへと移行している。保守料金を含めた市場規模で、2014年におけるモダンBIのシェアは9.2%だが、2016年に16.3%へと急増。2021年の予測では、モダンBIは29.6%に達し、従来型BI(21.6%)を抜いているという。

モダンBIなら、ユーザーが自分で仮説を立てて検証できる

 堀内氏は、従来型BIとモダンBIの特徴を比較して見せた。

 従来型BIは、IT部門が作りこんで、エンドユーザーに使わせる。分析対象のデータは、定義済みのメタデータで、処理はバッチ型だ。この一方、モダンBIは、ユーザー自身で何とかする。定義済みのデータだけでなく、あらゆるデータにアクセスする。処理はアジャイルでインタラクティブだ。

 しっかり対応するモード1のアプローチと、臨機応変に対応するモード2のアプローチという2つの異なる流儀を両立させるバイモーダルの観点で言えば、従来型BIはモード1で、モダンBIはモード2にあたる。

 従来型BIでは、どんなデータを分析するのかは、あらかじめ決め打ちだ。こうして取ってきたデータを、分析に合う形に整理する。このフロントにレポートやダッシュボードを作ってエンドユーザーに見てもらう。

 モダンBIでは、「なぜこんなに売れるのか」や、「なんでモノが足りなくなるのか」といった疑問、さらに、「天気が良かったから」とか「競合他社が新製品を出したから」などの仮説から分析がスタートする。

 仮説を確かめるためのデータを、どこからか見つけて引っ張ってくる。持ってきたデータは、分析できるように前処理(プレパレーション)し、可視化する。こうしてさらに仮説を立て直す。こうした試行錯誤をインタラクティブに繰り返す。

最先端のBIは、売上が増えた原因を文章で教えてくれる

 講演の中盤以降では、データ分析とBIのトレンドを紹介した。

 機能面でのトレンドは、グラフィカルなユーザーインタフェースによるデータ探索だ。表やグラフだけでなく、様々な可視化手法でグラフィックスを提供し、データの状況を分かりやすく表現する。ここにデータを取り込むための前処理(プレパレーション)のための機能もBIソフトは取り込んでいる。

 新たな革新機能に、拡張アナリティクス(Augmented Analytics)がある。データをBIソフトが勝手に分析し、データの特徴を自然言語による文章で教えてくれるものだ。売上が増えた原因が何かといったことを言葉で説明してくれる。米MicrosoftのPower BIなどが実装している。

 拡張アナリティクスが登場した背景には、ビジュアルは見る人の文脈で解釈が変わってしまうという状況がある。ユーザーは、自分が興味を持つことにしか目がいかない。ここで、文章を提示できれば、誰に対しても伝えるべきことを伝えられる。こうした機能強化が、特にクラウドで加速している。

 ライセンス面でのトレンドは、低価格化が進んでいることだ。機能限定の無料版は当たり前だという。サブスクリプションモデルも一般化し、支払い方法にバリエーションが生まれている。利用者の面での特徴は、IT部門ではなくパワーユーザー層による支持が増えている。これまで現場でExcelを使っていたパワーユーザーがBIソフトを使い始める。

 BI/アナリティクスプラットフォームのMQ(マジッククアドラント)においてリーダー(実行能力とビジョンの完全性の2つが高い)のポジションにいるのは、米Microsoft(Power BI)、米Tableau、米Qlik(QlikView、Qlik Senseなど)の3社だ。

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