「情報は目に見えない資産などでバランスシートには載らないが、調べてみると、情報を大切にしている企業は、そうでない企業と比べて、簿価に対する市場価値が2倍になっている。情報を収益化し、管理し、測定することが大切だ」
6月14日、「ガートナー データ&アナリティクスサミット2018」のセッションの1つとして、米Gartnerのリサーチ&アドバイザリ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるDouglas Laney氏が登壇。「インフォノミクスの適用:「資産としての情報」を収益化、管理、測定する方法」と題して講演した。

Gartnerのリサーチ&アドバイザリ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるDouglas Laney氏
情報は資産として在庫を管理すべきだが、現状は情報化時代に追いついていないとLaney氏は指摘する。例えば、保険会社は、9.11のテロ事件から1カ月後に「電子データは保険の対象外」と明示したという。国際会計基準も、電子データを資産とは認めていない。
一方で、情報は決して新たな石油ではない、とLaney氏。石油とは異なり、情報は尽きることがなく、無限に生み出せる。保管や輸送にかかるコストは安く、独占したり統制したりすることは難しい。もし撒き散らしてしまったら、ふき取ってキレイにすることはできない。
情報を活用する上での課題は3つあるとLaney氏は言う。(1)「情報の収益化」(手持ちの情報から価値を創出し、自社に経済的な利益をもたらす)、(2)「情報の管理」(従来の資産管理の考え方や手法を情報にも適用し、管理会計を行う)、(3)「情報の測定」(情報の価値を測定する基準や方法を定め、経済的な価値を高める)、だ。
情報を資産として扱い、情報を収益に結びつけよ
(1)課題の1つ、情報の資産としての収益化については、米GartnerがSPA(戦略的プランニングの仮説事項)を出している。これによると、「2020年までに、組織の10%が、自社の情報資産の製品化/商品化を専門とし、高い収益を生み出す事業部を設置するようになる」。
情報から利益を生み出すやり方は、大きく2つある。1つは間接的な収益化で、データを社内で活用するということ。もう1つは直接的な収益化で、他社に情報を売ったりする。Laney氏は、情報をうまく収益化した事例をいくつか紹介した。
事例の1つ、ECサイトを経営する米WalmartLabsは、ECサイトの検索エンジンを改善し、流行しているテレビ番組などのトレンドを検索キーワードに取り込んだ。これにより、カートの途中で買い物をやめてしまう率を10%低減させた。
防衛用品を扱う米Lockheed Martinは、プロジェクトのレポートを分析し、レポートに出てくる用語に応じて予算超過や納期の遅れなどの兆候などを予兆検知できるようにした。これによりコストを削減した。
小売店舗を展開する米Dollar Generalは、販売データをサプライヤに売って売り上げを上げている。
オレンジジュースのMinute Maidは、消費者から「味にばらつきがある」という電話を受けたことをキッカケに、データを活用して味を均一化した。
アイスランドのiSLENDINGABOKは、出会った男女が実は親戚同士だった、ということが頻ぱんに起こる状況に合わせ、家系データを利用した親戚判定アプリを提供している。このアプリを使えば、ベッドインする前に相手が親戚かどうかを簡単に知ることができる。