ITやビジネスのプロフェッショナルの多くは、まだ機械学習に手を染め始めたばかりだ。機械学習は本質的に、新しいデータに基づいて、システムが常に自分自身をプログラムし直すことを可能にするものだと言える。機械学習は急速に導入されつつあり、Economist Intelligence UnitとSAPが360の組織を対象に実施した調査によれば、調査対象の68%が、すでにビジネスプロセスを強化するために機械学習を利用していた。
Trifactaの共同創業者・最高戦略責任者(CSO)であり、カリフォルニア大学バークレー校の計算機科学教授でもあるJoe Hellerstein氏は、機械学習がまだアプリケーションやシステムに組み込まれていないとしても、組み込まれるのは時間の問題である可能性が高いと述べている。筆者は最近Hellerstein氏と話す機会を得た。同氏は、機械学習はすぐにありふれたものになり、データ重視の企業で日常的に使われるツールやアプリケーションに組み込まれると予想している。

提供:Joe McKendrick
「企業が社内で機械学習の技術を設計し、管理し、展開するのは困難だ」と同氏は説明する。「このため、企業環境への機械学習の普及は、その注目度から期待されていたよりも遅れていた。しかしソフトウェアメーカーが、エンドユーザーの専門知識や人間の知恵を強化するために、ユーザーが利用する既存のデータ管理製品に機械学習のインテリジェンスを組み込むことが増えている」
最近では、エンドユーザーが利用するツールの多くが、機械学習を利用した支援を謳っているとHellerstein氏は言う。「機械学習のインテリジェンスが導入されれば、データの取り扱いはこれまでになく容易になるため、今後はユーザーの参入障壁が大きく下がるだろう。これによって、幅広いアナリストやビジネスの実務者が、これまで想像もしなかったような形でデータを扱えるようになる」
Hellerstein氏によれば、機械学習の導入は、次世代のデータアプリケーションやアナリティクスアプリケーションで見られ始めており、「データの発見、準備、分析のプロセスや、データに対して実行するモデルを選択する場面で、ユーザーに対して手引きを提供する」という。「機械学習技術は、充実した、予測的なユーザーとのインタラクションを実現するために利用されており、ユーザーに提案を行い、従来の手動のプロセスを加速・誘導すると同時に、人間の関与を残してタスクに対するコントロールや文脈を維持している」と同氏は言う。
Hellerstein氏は、機械学習は「本質的に不完全であり、文脈によっては誤った、あるいは不適切な予想をしてしまう」ために、人間の関与が必要不可欠だと付け加えている。「予測的インタラクションの文脈では、機械学習はユーザーに提案を行うにすぎないが、それによってユーザーがデータについて誤った結論を下すように誘導されたり、場合によっては不適切な判断を招いたりする可能性がある。これは機械学習に対する信頼を損なう可能性がある」というのが同氏の説明だ。同氏は「機械学習を強力で透明性の高いユーザーインターフェースと結びつけ、何が提案・予測されており、なぜそれが選ばれ、ほかにどのような選択肢があり得るかをユーザーが理解できるようにすることが非常に重要だ」と述べている。
いずれ、機械学習の導入は「データの発見、準備、分析のような中核的な機能のためのエンドユーザーが利用するツールでは、非常に一般的になる」とHellerstein氏は言う。「企業ユーザーは、インテリジェントなユーザー体験を期待するようになり、機械学習エージェントによるデータに基づく誘導なしにすべての手順を実行しなければならないツールには、不満を感じるようになるだろう」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。