人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といった先端技術を使ってビジネスに新たな価値をもたらす「デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)」。その実行部隊には、専任組織である「第2のIT部門」が中核となるケースが増えている。IDC Japanが6月26日に発表した調査結果で明らかになった。
IDCでは、情報サービス業と中央官庁/地方自治体を除くグループ連結従業員数300人以上の国内企業のうち、DXに取り組む企業で働くマネージャークラス以上の558人に対するアンケート調査と、6社に対する直接取材を実施。その結果を「2018年 国内企業における『第2のIT部門』の状況」にまとめている。
IDCの定義では、第2のIT部門とは、企業がデジタル化を目的として設置した社長(CEO)やCDO直轄の専任部隊、あるいは専任の子会社/関係会社を指す。最新の調査では、DXに取り組む国内企業のうち、第2のIT部門が中核となって取り組むとする企業が27.9%に上り、第1のIT部門である情報システム部門を中核とする企業の13.1%を大きく上回った。なお、DXに取り組む組織としては、組織横断プロジェクト、事業部門、企画部門なども想定される。
第2のIT部門が中核組織となるケースが27.9%で最多となった
第2のIT部門への期待が大きい目標は、「破壊的な新事業の創出」と「事業部門を横断した新事業の創出」だった。IDC Japan ITサービス リサーチマネージャー 國土順一氏は、「これらは事業部門単独では実行の難しい事項」だと説明する。
第2のIT部門を設置する企業の77.6%で、企業トップ自らがデジタル化へのビジョンを発信し、実行面をけん引していることも分かった。また、第2のIT部門を設置する企業の70.1%は、CDO(最高デジタル責任者)または相当の役割を持つ役職を設置しているという。
CDOに求められる資質としては、ITスキルだけでなく、新事業の立ち上げ、マーケティングなどの事業に関する豊富な経験を有し、失敗を覚悟の上で挑戦する能力が求められると國土氏は指摘する。さらに、CIOと密な連携関係を築き、外部との協業や人材確保、全社の意識改革をリードする存在だとしている。
IDC Japan ITサービス リサーチマネージャー 國土順一氏
第2のIT部門への期待が大きい業務は、「企業買収/ベンチャー投資」「社外ステークホルダーとの連携」「デジタル化への戦略立案」が挙げられた。主要評価指標(KPI)については、「新事業の構築数」「協業や連携する企業・団体数」「新事業の売上高/売上比率」など、新事業創出の成果を測ろうとする項目が上位の目標となった。
一方で、DXの取り組みで最大の課題とされたのが、社外からの人材採用だった。国内のIT人材数がITベンダーに大きく偏っていること、日本の人材流動性が低いことから、最適なスキルを持つ人材の確保が大きな課題になっているとIDCは分析する。
「国内におけるDXの取り組みに向けた組織の設置は、2011年ごろから急速に立ち上がり、2015年ごろにピークを迎え、その後は漸減している。現在は取り組み内容の成熟度を競う段階となっている」(國土氏)とし、いまだに明示的な取り組みが始まっていない企業は、トップが危機感を持って早急にリーダーシップを発揮しなければ、変革に取り残され市場からの退場を余儀なくされる恐れがあるとした。