今日のポイント
- Trump米大統領が仕掛ける貿易戦争が世界景気に冷や水?
- 泥沼化しつつある米中の応酬
- 貿易戦争で対米包囲網が出来つつある
- 日米の株式は今のところ「意外と冷静」、過度の悲観は不要
これら4点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
Trump大統領が仕掛ける貿易戦争が世界景気に冷や水?
「世界丸ごと好景気!」と言っていいくらいの好景気が続いてきたが、足元、やや減速の兆しもある。Trump政権が仕掛ける貿易戦争が世界的に株が売られる要因となり、さらに世界景気に悪影響を及ぼす可能性も出ている。
Trump米大統領が過激な保護主義策を打ち出しても、これまでそのまま実行するとは思われなかった。「極端なことを言うのは交渉のテクニックで、最後は現実的な落としどころを見つけて収束させる」と楽観論があった。
ところが最近、これまでの楽観論が吹き飛ぶくらい派手な強硬策をTrump大統領が次々に出してきたことで、予断を許さぬ状況になった。貿易戦争が発端の「トランプリセッション(トランプ不況)」が起こってしまうのでないかと不安も出ている。
こうした不透明感に対して敏感に反応するのは設備投資である。中国と米国では今、設備投資が盛り上がっているが、不透明感を懸念して投資を先送りする企業が増えるかもしれない。
泥沼化しつつある米中の応酬
Trump大統領はとりわけ中国に対する強硬姿勢を鮮明にしている。中国の通信大手ZTEの存続に関わる制裁策は既に解除を表明しているが、知的所有権侵害に対する制裁関税の規模はどんどん拡大させる方針だ。さらに中国などを念頭に対米投資の制限も検討している。本当に実行したら中国だけでなく、米国の景気にも大きなマイナス影響が及ぶ。
これに対し、中国も「自暴自棄」と見える対米報復関税を表明している。米国からの輸入品の関税を大幅に引き上げる方針だ。実施すれば米国から輸入する農産物の関税が引き上がり、中国国内の食品価格が上昇、中国人民の生活を直撃する。
米国が日本に貿易戦争を仕掛けると日本はすぐ「恐れ入る」ので、そこから「落としどころ」を探す交渉に入りやすくなる。ところが、米国が中国に貿易戦争を仕掛けると、中国も拳を振り上げるので交渉の余地がなくなる。米国と中国が、自分も相手も傷付ける保護主義策を「本当にやるわけない」と言い切れない、緊迫した状況が続いている。