ServiceNow Japan社長の村瀬将思氏
ServiceNow Japanは6月27日、日本市場での事業戦略を発表した。5月上旬に米国で開催した年次イベント「Knowledge 18」での内容をベースとするが、日本の働き方改革において見落とされがちだという、「人」にフォーカスを充てた施策を進める。
Knowledge 18で同社が発したキーメッセージは、「中心は人」というもの。同社は「職場の革命」を掲げ、「Now Platform」と呼ぶプラットフォームを中核に、あらゆる部門の従業員のユーザー体験を通じて“職場のデジタル変革”を成し遂げたいとする。
日本法人社長の村瀬将思氏によれば、Now Platformは同社にとって2004年の創業以来の中核だという。Now Platformでユーザーがさまざまなアプリケーションを開発し、コラボレーションしていくというコンセプトだったが、「クラウド」という言葉自体があまり知られていなかった当時は市場に受け入れられず、IT部門向けのヘルプデスク管理ツールという1つの機能を提供するSaaSとしてようやくユーザーを獲得するに至ったという。
これまで同社の成長を牽引したのはITサービス管理(ITSM)だったが、現在はその比率が半分程度になり、Now Platform上で提供される人事や財務経理、マーケティング、セキュリティ対策といった新しいサービスが成長を担う。「一周して、ようやく創業以来のプラットフォームコンセプトが支持されるようになった。特に日本では、SaaSの各種機能よりNow Platformへの関心が極めて高い」と村瀬氏は話す。
現在も大きく代わり映えしてはいないが、2010年ごろまでのサイロ化された業務システムはデータの堅牢性や正確性が最優先にされ、ユーザー体験は二の次だったという
日本市場での事業戦略も「中心は人」が柱になる。現在多くの企業が経営課題として直面する働き方改革に照準を当てるが、村瀬氏は、「ITソリューションの多くはモバイルやチャット、クラウドなどのテクノロジツールを使って柔軟な働き方をしようというメッセージばかり。それらは重要だが、働く場所が増えるだけで、サービス残業が減るわけではない」と指摘する。
長時間労働を減らす、あるいは、休暇を柔軟に取りやすくするといった“本質的”な働き方改革を実現するには、限られた人数で生産性を最大化する“仕事のやり方”にしなければならないとし、そのための手段となるプラットフォームを同社が提供する――という事業方針を掲げている。
Now Platformは、バックエンドの各種業務システムと従業員ユーザーをつなぐプラットフォームに当たるという
事業戦略では、パートナーエコシステムの拡大や協業ソリューションの開発、ユーザー向けイベントやトレーニングなどの拡充、日本法人の体制強化といった基本施策を実行していくが、村瀬氏は“つなぐ”をキーワードに挙げる。
パートナーとは、例えば、国内で定評ある業務アプリケーションとNow Platformをつなぎ、従業員ユーザーが直接触れるインターフェースをNow Platformが担い、データの処理や活用は従来通り業務アプリケーションが担うといった構図を描く。ユーザー同士でもノウハウの共有やソリューション開発といった取り組みが拡大しており、ここでは同社が“支援役”として、Now Platformの利用をサポートしていくという。
また、Now Platformのメジャーバージョンアップは、少なくとも2020年までは年2回実施するロードマップを描く。2018年1月にリリースした最新版「Kingston」では、ノンコーディングで設計可能なワークフローデザイナー機能、SlackやMicrosoft Teamsなどのコラボレーションツールをワークフローに組み込めるインテグレーション・ハブ機能などを追加した。
7~9月期にリリース予定の次期バージョン「London」は、インテグレーション・ハブ機能でActive DirectoryやDocuSign、Boxなどと連携する強化を図るほか、機械学習を使ってユーザーが抱える課題の解決に最適な社内の人材候補を提案するといったことが可能になるエージェント・インテリジェンス機能を搭載するという。
承認ワークフロー設計画面のデモ。稟議内容について部門を指定したり、「承認」や「却下」などの対応とアクションなどをメニューで選択していく。Slack経由で通知するといった設定も容易にできる