クラウドストレージサービスを手掛ける米Boxは、米国で多くの大企業が採用し、日本でも着実にシェアを拡大している。企業での利用に特化したサービスとして開発、運用されている点が特徴。個人向けのサービスと比べて運用管理機能やセキュリティ機能が充実している。Boxのほかにも、Dropbox、Microsoft OneDrive、Google Driveといった競合製品がある。
今回は、Boxのシニアバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者(CMO)であるCarrie Palin氏に、同社のマーケティング戦略について話を聞いた。
米Box シニアバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者(CMO) Carrie Palin氏
同社の売上高は、2017年1月期の3億9860万5000ドルから2018年1月期には5億614万2000ドルへと大きく伸ばしている。顧客数は8万2000社を突破し、グローバルではGE、P&G、GAPなどが採用している。国内では、富士通、小松製作所、グリー、日揮、コニカミノルタなどが導入を明らかにしている。こうした同社の成長を支えているのが、デジタルマーケティングの取り組みである。
Palin氏によると、Boxは見込み顧客を開拓するフェーズでは、営業担当者を使わずに、人工知能(AI)で営業アシスタント業務を自動化する「Conversica(コンバーシカ)」を活用している。自分の名前やプロフィール、メールアドレスを持つバーチャルアシスタントが、見込み顧客にメールを自動で送信し、そのやり取りを通じて興味、関心の度合いをAIで分析する。連絡している相手がAIアシスタントだと気付かないこともあるという。見込み顧客から何らかの反応があり、打ち合わせを行う段階から営業担当者が対応する。
「マーケティング活動においては、いかに早いタイミングで見込み顧客にアプローチできるかが重要となる。営業担当者が対応できる時間や顧客数に限りがある中、AIアシスタントが、見込み顧客へのコンタクトや商談のセッティングまでやってくれる」(Palin氏)
多くの人は昨晩、自分が何を検索したかは覚えているが、1週間前や1カ月前となると記憶には残っていないのが普通だ。見込み顧客に対しても、最適なメッセージを最適なタイミングで届けることができれば、マーケティング活動の効果を大きく高められるというわけだ。
Conversicaを導入してから1年余りが経過した。その間にバーチャルアシスタントから送信したメールは数十万件に及ぶ。通常のメールキャンペーンと比べて見込み顧客の反応が良いという。主に米国内で活用してきたが、現在は国際化を図るプロジェクトが進行中。今後、日本でのマーケティング活動にもConversicaを導入したいとPalin氏は強調した。
また、Boxでは、アカウントベースドマーケティング(ABM)向けの予測分析ツールとして「6sense」を活用。誰が、いつ、どこで、何を買うのかといった購買経路を可視化することで、予見性を持ったマーケティング施策の展開を可能にする。現在は90~180日以内の購買予測に役立てているという。