「われわれの理解では、機械学習で重要なのは、トレーニングを行い、大規模なデータを処理させ、企業にビジネス上の成果をもたらすモデルをどのように作るかを考えることだ。これらのテクノロジや機能の多くは、人間の能力を置き換えるものではなく、底上げするものでしかない」(Kay氏)
2.現在可能なことを模索する
英国の医療団体Leeds Teaching Hospitals Trustの最高デジタル・情報責任者Richard Corbridge氏は、医療分野のリーダーには、「目新しいもの」よりも基本的なITに力を入れるべきだという圧力が掛かっていると話す。このような背景がある中で、同氏は、機械学習の出現への対応やAIを導入する能力に対する取り組みが必要なものかどうか考えているという。
「医療分野における機械学習やAIの進化は、治療の提供に必要な医療行為のデジタル化を可能にするだろう」と同氏は言う。
Cornbridge氏は、これらの潜在的メリットがある以上、NHS(英国民保健サービス)は機械学習で何が可能になるのかを模索する必要があると述べている。同氏はすでに、Leeds Teaching Hospitals Trustで先駆的な取り組みを始めている。病院は今、紙に記録された膨大な量の患者の診療記録をスキャンし、電子医療情報の形で保管しつつある。
しかし、これらの記録を検索するには時間がかかる。これは、長期にわたって病気を患っている患者の場合、臨床医が実際に必要な情報にたどり着くまでに調べなければならないスキャン済みファイルが数百件にも及ぶことがあるからだ。Corbridge氏は、同団体の機械学習に対する最初の取り組みは、数百件ものスキャンされた文書の中から適切な医療情報を簡単に見つけられるようにし、臨床医の時間を節約するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に関するものになると述べている。
「これによって、各患者の紙からスキャンされた資料の中から、診療科、日付、患者などの文脈に応じて、適切なものを取り出す作業を機械学習に任せられるようになり、情報はすべてモバイルデバイスにも送れるようになる。これが導入されれば、ほかの業務への機械学習の導入に対する期待値を評価することができる」と同氏は言う。