本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、KDDIの森敬一 取締役執行役員常務と、トレンドマイクロの岡本勝之 セキュリティエバンジェリストの発言を紹介する。
「グローバル企業の躍進に貢献する“IoT世界基盤”を提供したい」
(KDDI 森敬一 取締役執行役員常務)
KDDIの森敬一 取締役執行役員常務
KDDIが先頃、クルマや産業機械などグローバルで事業展開を図る企業の経営の可視化や効率化、新規価値創出などのデジタル変革に貢献するため、海外におけるIoTの通信接続からサービス展開、データ分析まで提供する「IoT世界基盤」を推進し、2019年度の商用化を目指すと発表した。森氏の冒頭の発言はその発表会見で、IoT事業に向けた意気込みを語ったものである。
グローバルなIoT事業の展開については、市場が今後拡大していく一方で、グローバルで事業展開する企業が海外でIoT機器を利用する際は国内からのローミング接続に依存するか、各国の通信キャリアと個別交渉して回線契約を行う必要があり、IoT利用の入り口である回線管理を日本国内と同等に行うことが困難な状況となっている。
IoT世界基盤のイメージ図
そこでKDDIは2016年6月、トヨタ自動車とともにクルマの「つながる化」を推進するため、国ごとに仕様が異なる車載通信機をグローバルで共通化するグローバル通信プラットフォームの構築を発表。機器に内蔵されたSIMの設定情報を遠隔操作により書き換え、KDDIが選定した現地キャリアへの直接接続を可能にすることで、通信キャリアごとに異なるIoT管理環境を意識することなく管理できるようにした。
同社が今回発表したIoT世界基盤では、従来のクルマのほか、産業機械や建設機械などさまざまなモノの通信接続や課金の統合管理が可能となり、企業にとっては低価格かつ高品質の通信を利用できるようになるという。
さらに、通信接続の提供にとどまらず、KDDIやパートナー企業のIoTプラットフォームと連携することで、企業のIoTサービス提供からデータ分析までサポートし、グローバルでの経営の可視化などに貢献していく構えだ。
具体的には、「KDDI IoTクラウドStandard」などKDDIの提供するIoTプラットフォームと連携するほか、今後のさらなる市場の拡大においては日立製作所が提供するIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」と連携することで、各業界の特徴に合ったIoTサービスの提供が可能となる。ちなみに、今回の会見は日立と共同で開いた。(関連記事参照)
森氏は説明の中で、「2019年度の商用化に向けて、日本企業の海外現地法人の約9割を網羅する世界50カ国以上における各国キャリアとIoT世界基盤の連携を目指す」と力を込めた。KDDIが日立などとぶち上げた大構想は果たして実現するか。大いに注目しておきたい。
共同会見を行った森氏と日立製作所の永野勝也 執行役常務 社会ビジネスユニットCEO(右)