NEC、夏場でもデータセンター全体の消費電力を最大20%削減する技術を開発

ZDNET Japan Staff

2018-06-29 12:47

 NECは6月29日、データセンターにおけるサーバの冷却効率を2倍にさせる低圧冷媒を用いた圧縮放熱技術を開発したと発表した。同技術は、NEC独自の「相変化冷却システム」を高度化するもの。これにより、夏場の高温環境でもデータセンター全体の消費電力を最大20%削減することができる。

 同社によると、近年、モノのインターネット(IoT)の進展や仮想通貨の採掘といった新たな計算能力の需要増により、データセンターの消費電力が年々増加している。現在、国内総電力の約1~2%をデータセンターが消費しており、例えば、2018年には仮想通貨の採掘などで世界の電力消費量の0.5%に達するとも言われ、その割合は今後ますます増加すると予測されている。

 データセンターの消費電力の内訳を見ると、サーバを冷却するための空調電力が全体の3分の1~2分の1を占めており、空調電力の削減は重要な要素となっている。気温が低い冬はサーバルームに外気を取り入れることで空調電力を削減するなどの施策がある一方で、気温が高い夏場では効果的に空調電力を削減することは困難だった。

 同社が今回開発したのは、地球温暖化係数(Global Warming Potential:GWP)が小さいとされる低圧冷媒を用いて、サーバラックから排出された熱を、外気温が高温でも直接屋外に輸送し放熱できる流路設計技術。熱輸送効率が高い冷媒を循環させることができるため、サーバルーム内で空気を循環させる空調機のファン電力を大幅に削減することが可能で、データセンターの電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)向上に貢献できるという。同技術の特徴は以下の通り。

冷媒の円滑流路技術により、空調機のファン電力を削減

 低圧冷媒は、高圧冷媒と比べて安全性が高い一方、潜熱や圧力勾配が小さいため体積流量が大きくなり、冷媒をスムーズに流す配管設計が非常に難しいとされている。そのため、冷媒を圧縮する空調用途への適用は進んでいなかった。今回、低圧冷媒の物理現象を把握し、円滑に流せる緻密な流路技術を開発。これにより、冷媒をサーバルーム内に引き込み、サーバラックからの排気熱がサーバルーム内に拡散する前に吸熱させ、建屋外まで運んで放熱することを可能にした。従来必須であった空調機のファンが不要となり、空調電力の大幅な削減を実現した。

冷媒を均一分配する流路技術により、冷却システムを小型化

 低圧冷媒は体積流量が大きくなるため、データセンター内に敷設する配管(配管径)が太くなることから設備工事が困難だった。さらには冷媒温度を上げるための圧縮機が大規模化する課題があった。今回、既存の施設にも敷設しやすい複数本の細い配管(細径銅管)を適用。長さを変えた流量の調節などにより、冷媒を均一に分配させる流路技術を開発した。これにより、従来の小型圧縮機を複数台、同じ負荷での並列運転が可能になることで、システム全体の小型化を実現した。

冷却システムの構成イメージ(出典:NEC)
冷却システムの構成イメージ(出典:NEC)

 同社は今回、インド南部のデータセンターにおいて通常のデータセンターのラックより2倍の発熱量となる7.5kWのラックにて実証を実施。外気温35度の状況で、既設の空調機と比べて空調電力を半減させ、実証ラックの総電力量を20%削減できたことを確認したという。

 今後さらなる改良と実証を進め、2020年度までに製品化を目指す予定。

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