グリーは、モバイルゲーム事業、ライブエンターテインメント事業、メディア事業を中心に、広告、投資など、幅広い事業分野に進出している。こうした多岐にわたる事業目標を短期かつ確実に達成するためには、適切な人材の配置に加え、従業員の能力を最大化する仕組みが欠かせない。
グリーでは、データを活用した人事戦略にシフトするため、“HR Tech”プロジェクトを始動。人事関連のデータを分析した上で、具体的なアクションにつなげていく狙いだ。それによって、人事関連業務の効率化や高度化を図る。
グリー 人事本部 人事企画部 人事基盤チーム マネージャー 内田潤青氏(左)と開発本部 情報システム部 アプリケーションプラットフォームチーム マネージャー 藤咲款氏(右)
その第一歩として、2017年11月に「人材活用プラットフォーム」の運用を始めた。社内に分散していた人事情報を集約し、スキルや経歴、評価、勤怠など、従業員に関する全ての情報を一つの画面で検索・閲覧できるようにした。
「これまで、経験と記憶に頼って人材を配置してきました。人材プロファイルのデータベースを構築したことで、スキルや経歴などあらゆる角度から最適な人材配置が可能になりました」(グリー 人事本部 人事企画部 人事基盤チーム マネージャー 内田潤青氏)
人材活用プラットフォームは、ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Qlik Sense」上に構築された。データの検索から分析までをシームレスに実行できる仕組みを用意するため、人材管理システムではなくあえてBIツールを導入した。
ダッシュボード
当初はタレントマネジメントシステムも候補に挙がっていたが、分析機能の要件を十分に満たせないことが分かり、導入を断念したという。また、従業員の情報をフリーワードで検索できる仕組みも盛り込みたかった。
「Qlik Senseは、“スマート検索”と呼ばれる機能によって、名前やスキル、経歴など、思い付くままのキーワードで全文検索ができます。Qlik Sense以外のBIツールでは、ここまで自由に検索することはできませんでした」(内田氏)
人材検索画面
人材プロファイル画面
さらに、顔写真の参照といったユーザーインターフェース(UI)の作り込みも必要だった。Qlik Senseは、汎用的なウェブ技術やオープンなAPIを採用している。そのため、ユーザー自身による機能拡張や画面設計が容易となっている。なお、開発に当たっては、国内代理店であるアシストが提供するプロトタイプをベースに開発を進めたとしている。
2018年3月には、勤怠レポートの配信を開始した。Qlik Senseに勤怠データを取り込み、集計レポートをメールで自動配信する仕組みで、マネージャーには部下の当月の勤怠情報を、部長には部ごとのサマリーを提供する。これらレポートの自動作成 やスケジューリング配信を可能にする出力オプションとして「Qlik NPrinting」を利用した。
「これまで労務管理の徹底を求める一方で、従業員の勤怠状況をタイムリーに把握できるツールを用意していませんでした。今後は部下の勤怠情報を把握した上でのマネジメントが可能になると期待しています」(内田氏)
勤怠メール
人事戦略においても、採用活動や人材配置、キャリア形成などに傾向や相関が見えてくれば、データ分析結果に基づく計画の立案や実施に有効活用できると見込んでいる。