インターシステムズジャパンは6月22日、トランザクションと分析系処理を1つの基盤で処理できる「Intersystems IRIS」の戦略的パートナーとして、ウルシステムズを認定したと発表した。背景には、「攻めのIT」と連動する今後のアプリケーション開発において、ポイントとなるトランザクション系処理と情報系処理の同一基盤での実施へのニーズがある。
ウルシステムズの社長を務める漆原茂氏
IRISは、統合データ基盤として、リレーショナル、多次元、ドキュメント、オブジェクトといった複数のデータベースモデルをカバーする。トランザクション処理を中心としてRDBMSと情報系であるデータウェアハウス(DWH)を1つの基盤で実施できる点に優位性がある。
通常、RDBMSのトランザクション処理の高速化では、インデックスを張ることで対応するが、これがシステムが重くなる原因になる。IRISではここでKVS(Key-Value Store)を用い、インメモリ処理することで高速化を図る。
ウルシステムズの社長を務める漆原茂氏は、ある通信事業者のネットワーク監視システムでの導入例を引き合いに出す。ネットワークの稼働状況を示す大量データを監視システム上で把握し、それをリアルタイム処理する必要がある。通信サービスの停止は顧客の離反につながるからだ。IRISには稼働状況を示す大量の書き込みがあり、一方で、それを分析するキューブに即時に反映する。監視システムは、その結果を集計クエリを使って把握しなくてはならない。
結果として、処理の「超高速化」が実現。10秒以内に障害検知処理を完了できるようになった。また、監視ルールを動的に作成するようにしたことで、全データを処理している場合と比べてCPU使用率を最大で90%削減できるようになったという。
「遅延が損失につながるため、リアルタイム処理が必須になる」(漆原氏)
インターシステムズのビジネスデベロップメントシニアマネージャー、佐藤 比呂志氏
通信環境への不満をきっかけに顧客が離反するという危機を防いだこの事例において、ポイントとなるのは「業務とITの一体設計ができるか」にあるという。ビジネス要件とITアーキテクチャが一体であることを求める戦略的ITの典型例であり、業務モデリングとデータ設計を得意とするウルシステムズとしては、差別化要素でもある。
「データベース大乱立時代」と現在を位置づける漆原氏。Oracle Databaseに代表されるRDBMSに加え、NoSQL、Amazon Auroraなどのクラウドデータベースも登場してきている。この中で、ユーザーが陥る状況として、RDBMSの肥大化が1つ考えられるという。RDBMSに詰め込みすることで、高価かつ、スケールが困難になる。追加変更コストも大きくなってしまう。
一方、NoSQL系では、多次元分析やデータ加工といった処理をそれぞれの感覚で実施する「DIY(Do It Yourself)」化によるバランス崩壊が考えられる。「DIYでおもしろがって作りすぎることによる失敗がある」(同)。
両者の良さを生かし、ビジネス要件とITアーキテクチャが一体となる戦略的ITの実施に「ちょうどいい」データ基盤として、IRISを捉えている。