小売業界の営業形態はこの10年間で大きく変化しました。ひと昔前、買い物と言えば月曜日から土曜日の営業時間内に限られていましたが、オンラインショッピングの台頭で人々が物を購入する手段は一変したのです。
電子商取引(EC)の興隆とその背景には、1982~1996年生まれのミレニアル世代の存在があります。ミレニアル世代は2025年までに労働人口の75%に達する見通しです。これは小売市場におけるシェアの大半を占めることを意味します。
ミレニアル世代の特徴として、テクノロジの消費が挙げられます。彼らはFacebookやInstagram世代であり、最新のスマートフォンを所持することが社会的地位の高さを意味します。テクノロジに対するミレニアル世代の執着は、世界中の小売業に影響を及ぼしつつあるのです。
小売業者が今後、売り上げを伸ばすためには驚異的な購買力を持つミレニアル世代の存在を無視できません。米クーポンサイトのCoupon Followが発表した「The Millennial Shopping Report」によると、ミレニアル世代の年間支出は6000億ドルに達します。1日当たりの個人消費でみると28%に相当し、2030年には35%を占める見通しです。
ミレニアル世代が小売業界に強い影響力を持つことはお分かりいただけたでしょう。では、小売業界が売上を確保するために必要なサービスや、ミレニアル市場を牽引するテクノロジとはどのようなものなのでしょうか?
ミレニアル世代が求めるサービス
ミレニアル世代をターゲットとした場合、小売業者はオムニチャネル全般を視野にオンライン、オフラインを問わずチャネルを超えたマーケティング戦略を立てることが重要です。オムニチャネルを活用することで、適切な場所で適切な時にカスタマイズされた情報を買い物客に発信することができるため、ミレニアル世代の売上確保が期待できます。また、店舗の訪問頻度やリピート客、顧客維持、店舗を超えた訪問など重要な数値指標の分析にも役立ちます。
オムニチャネルの活用と並び人気を集めているのが、オンラインで注文した商品を店頭やロッカーなどで受け取る「クリック&コレクト」です。これはミレニアル世代特有の“いますぐに欲しい”という感情に合致。店舗側も、より良いカスタマイズされたサービスを提供できるというメリットがあります。例えば、店頭での商品受け取りを選んだ場合、購入者が一定の圏内に入ると店舗のピッキングシステムに通知が発信され、店員が商品を用意するというスムーズな流れが実現。これこそが2018年のシームレスな小売販売のスタイルです。
この他、無料返品もミレニアル世代に支持されています。オンラインショッピングでは商品に不満を持つ買い物客への対応として無料返品サービスを提供していますが、返品プロセスは小売業者にとって負担であり、売り上げに影響を及ぼします。そこでもクリック&コレクトが有効です。購入者はその場で商品を確認できるため、ダメージや紛失のリスクが低減。また、その場で返品を受領できることから在庫切れを最低限に抑えることができます。一方で先進的な小売業者の中には、店舗に倉庫としての機能を持たせるケースが増えています。これらの店舗では在庫を一元管理し、商品の発送から返品受領まで担っています。
商品を注文し、梱包を経て出荷の準備が整ったら支払いの出番です。ミレニアル世代は現金を持ち歩かず、モバイル決済による支払いを好む傾向があります。ミレニアル世代を取り込むためには、モバイル決済への対応が必須と言えます。