海外コメンタリー

農場から食卓まで--ブロックチェーン活用によるサプライチェーン改革

Asha McLean (ZDNet.com.au) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-07-17 06:30

 オーストラリアには8万5681の農業経営組織が存在している。オーストラリアの全国農業者連盟によると、関連する食品産業や綿花/羊毛産業を含む農業サプライチェーン全体で、同国の経済に160万以上の雇用がもたらされているという。しかし、農業はデジタル化という点で、同国で最も後れを取っている分野の1つだ。

 オーストラリアの新興企業AgriDigitalは、農業分野が直面する固有の問題を解決するために2015年に創業した。そして農業の経済を支えるサプライチェーンに的を絞り、ある1つのテクノロジを武器にして挑んでいる。その武器とはブロックチェーンだ。

 AgriDigitalはオーストラリアの穀物業界で、分散台帳テクノロジ(DLT)の潜在能力を実証するためのパイロットプロジェクトを立ち上げた。同社はJP Morganの「Quorum」プロトコル(企業での利用を念頭に置いた、イーサリアムのバージョンだと考えてほしい)を用い、ブロックチェーンがサプライチェーンで役に立つことを証明するためにCBH Groupと提携した。CBH Groupは、西オーストラリア州のウィートベルト地域で収穫される穀物の取り扱いやマーケティング、加工を行う穀物農家の協同組合だ。

 AgriDigitalの戦略プロジェクトおよびエンゲージメント担当マネージャーであるBridie Ohlsson氏がこのパイロットプロジェクトについて米ZDNetに語ったところによると、CBH Groupは特に、ブロックチェーンがいかにしてデジタルソリューションを形作るのかについての調査や、業務の改善、農家やサプライチェーンに対するさまざまなかたちでの支援に興味を抱いているという。

 Ohlsson氏は「われわれは、例えば一定量のオーガニック大麦が農場から一般コンシューマーの元に送り届けられるまでのデータを捕捉し、それらデータをブロックチェーン技術によって、改ざん不能かつ完全に検証可能なかたちで保存するとともに、関係者が必要とする透明性を提供するための方法を模索していた」と説明した。

 このようにすることで、末端のコンシューマーが製品を手にした際に、そのデジタル資産をチェックし、来歴や生産、加工に関する包括的な情報を把握できるようになる。

 AgriDigitalの創業者らの農業分野における経験を合わせると80年にもなる。この新興企業は現在、農業分野での新テクノロジの活用という点で良い位置に付けていると考えている。

 Ohlsson氏は「農業分野のサプライチェーンは信じられないほど複雑だ(中略)当社の創業者らは長年にわたって農業に携わってきているため、ブロックチェーンが持つ影響力、特に農業を個々の特色ある事業としてではなくサプライチェーンやバリューチェーンとして捉えた場合における影響力を、極めて早い段階から見据えることが可能だった」と述べた。

 「農業分野はデジタル化という点で最も後れを取っている。この分野はインターネットの黎明期に、接続環境が整っていなかったがために多くのチャンスを逃した。われわれは、チャンスを再び逃さないようにしたいのだ」(Ohlsson氏)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]