学習モデル構築から実業務への展開まで一連のプロセスを自動化
さらに、LIFULLのAIに対する取り組みに大きな革新をもたらしたのが、機械学習を用いたモデル構築を自動化するプラットフォーム「DataRobot」である。開発元の米DataRobotは“AIの民主化”を提唱し、ビジネスを拡大。2015年から日本での事業を本格化している。
DataRobotの管理画面
同社 LIFULL HOME'S事業本部 新UX開発部 AI推進ユニットの椎橋怜史氏は、DataRobotについてこのように語る。
「私たちも早くからAIの研究開発にアプローチしていましたが、少人数のデータサイエンティスト体制では、2~3週間かけて試行錯誤を繰り返し、ようやく実用可能な学習モデルを1つ作成するのが精いっぱいでした。しかも、この学習モデルをそのまま実業務に展開できるわけではなく、目的のウェブアプリケーションから呼び出して利用できるように別途APIも開発しなくてはなりません。DataRobotはこの一連のプロセスを自動化し、機械学習モデルの構築からウェブアプリケーションへの実装までのリードタイムをわずか2~3日に短縮したのです。これにより私たちの活動は画期的にスピードアップしました」
LIFULLでLIFULL HOME'S事業本部 新UX開発部 AI推進ユニットに所属する椎橋怜史氏
そしてLIFULLは現在、さまざまなプロジェクトでAI活用を加速させている。
例えば「広告費の最適化」というテーマでは、どの媒体に対してどれくらいの予算を投下したとき、3~6カ月先の売り上げがどのように変化するのか、何パターンものシミュレーションを自動的に実行することで予測モデルを生成している。
また、「物件価値の数値化」というテーマでは、LIFULL HOME'Sに登録された各物件へのアクセス状況をDataRobotに読み込ませて機械学習を行い、参考価格や想定賃料に対するスペック(人気の高さ)を判定するモデルを作成。その物件を保有する不動産会社に分析レポートを提供するという施策を開始している。
「データサイエンティスが単なるデータ分析の専門家ではなく、営業活動の効率化や物件売買の活性化、カスタマーエクスペリエンスの向上など、ビジネスの新たなアクションや戦略策定に直接貢献できるようになったことは、DataRobotを導入した最大の成果であり、AI推進ユニットとしての大きな前進です」と林氏は語る。
さらにLIFULLの事業全体を見渡せば、不動産・住宅のみならず地方創生、引越し、トランクルーム、インテリア、介護、保険、仕事、花、サンプリング、オフィス、飲食、業務支援など、多彩なサービスを通じたライフデータが既に大量に蓄積されている。今後、この貴重なデータに対するAI手法を用いた分析にも積極的にチャレンジし、人々の暮らしとライフステージにより大きな喜びをもたらす価値を創出していく考えだ。