日本マイクロソフトは7月3日、都内でパートナー事業部の進捗に関するプレスラウンドテーブルを開催した。同社は8つの部署をまとめたパートナー事業本部を2017年度(2017年7月1日から)に立ち上げ、2018年度(2018年7月1日から)に入って1年が経過している。
パートナー事業本部はソリューション開発やマーケティング、提案販売などパートナービジネスの支援を目的としているが、この1年を振り返った同社は「パートナー同士が結びつくようなエコシステムの発展を多く見られた」(日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長 高橋美波氏)と述べ、日本マイクロソフトが介在しない場面でも、パートナー事業同士がMicrosoft Azureなどを使ったソリューション開発に至るケースがあったとの状況を説明した。
日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長 高橋美波氏
日本マイクロソフトの説明によれば、同社2017年度のMicrosoft Azure年間契約額は昨対比350%に拡大し、パートナーと共同開発したクラウドビジネスアプリケーションは865件、そのうち553件がMicrosoft Azure関連だ。
パートナーが提供したソリューションを分野別で見ると、デジタルマーケティングやメディアサービスは53件、IoT分野は24件、AI(人工知能)分野は46件を数える。これらの案件を支える技術部隊は530人を超えるという。
同社は「これまでの日本マイクロソフト(のパートナー事業)は、WindowsやOfficeといったライセンス販売が中心だったが、(パートナー事業本部が生まれたことで)顧客に価値提供を可能にするクラウド移行をパートナーにうながしている」(高橋氏)と述べ、事例や顧客企業のデジタル変革に至った手応えを感じると強調した。
その事例は枚挙に暇がない。川崎フロンターレのファンクラブ運営を行うデータビークルは、ホームスタジアムへの来場者予測やオフィシャルグッズの販売予測などに統計学を用いたデータサイエンスを用いた分析を行い、KPMGコンサルティングはMicrosoft HoloLens導入支援サービスを展開中。
富士通とは2017年12月にAI分野で戦略的協業を発表し、Microsoft 365経由で収集可能なビッグデータを活用し、「日本マイクロソフト単独では成し得ない新たなソリューション提供を、大手SIerが持つデータを組み合わせたAI強化で実現する」(高橋氏)。
このようにパートナー事業戦略が順調に進む背景として、日本マイクロソフトは高度なセキュリティ対策と、日本国内における利便性が大きいと説明する。「他のクラウドベンダーとMicrosoft Azureを比較すると、機械学習のアルゴリズムやAPI数が上回り、使いやすい機能を提供している。パートナーによってはIaaS部分は他のクラウドを利用するが、連携するデータやAI領域はMicrosoft Azureを利用するケースも増えてきた」(日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部長 細井智氏)。
日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部長 細井智氏
セキュリティ対策についてはMicrosoftが持つサイバークライムセンターを通じて、1日5億トランザクション以上におよぶ全世界のセキュリティ状況を監視している。その中でマルウェアの活動や動向を踏まえてMicrosoft AzureやOffice 365にパッチを当てているため、より強固なクラウドサービスの提供が可能だと日本マイクロソフトは説明した。
また、Microsoft Azureは多数の基準に適合し、「米国政府や金融系の厳しいコンプライアンスに対応可能。基準以外にも各産業における独自ルールにも対応する。例えば金融系であればFISC(金融情報システムセンター)やガイドラインや、金融庁のデータセンター監査があるものの、弊社はライセンス契約時に(監査を)許可する項目を設けている」(高橋氏)とビジネスの現場に適した対応が可能だとアピールした。