コーレルは6月28日、都内でデジタルアート&ペイントソフト「Painter 2019」を同年7月3日から発売することを明らかにした。本社であるカナダのCorelは1985年、日本法人は2004年に設立し、長い歴史を持つ。
読者諸氏の中にも過去に同社製品を使用した経験をお持ちの方も多いだろう。コンピュータを取り巻く環境の変化に伴い、ソフトウェアビジネスは苦境にさらされている。だが、現在Corelの最高経営責任者(CEO)を務めるPatrick Nichols氏は、製品担当マネージャー時代、過去3年間で営業利益を約3倍に押し上げてきた。本稿では、Nichols氏にうかがったソフトウェアビジネス成功の要点を紹介する。
Corel CEO, Patrick Nichols氏
--Windows XP時代は存在感を示していましたが、残念ながら現状の日本市場では希薄です。その状況に対するご意見をお聞かせください。
確かにXP時代はコーレルの名前が広く知られていた。現在コーレルという名称は弊社が提供するWinZipやMindManager、Roxioなど主要ブランドの1つであり、弊社はさまざまな製品を提供しているため、個別の製品を広く知らしめる方針を掲げ、各製品に注力している。その手段として、Microsoftと協力関係を結び、ハードウェアやソフトウェアのデモンストレーション時は、デモンストレーションパートナーとして弊社製品を使って頂いてきた。最近はmacOS版製品もリリースしているため、Appleにも使って頂いている。
--カナダや米国と比べて日本市場に対する戦略や展望をお聞かせください。
歴史的背景をご覧になっても分かるように、日本市場においてはパートナーと共に強く歩んできた。例えば販売パートナーやPC OEMパートナーと密な関係を築いている。今後もOEM販売や小売りなども続けるが、グローバルでは企業ライセンスとEコーマスが売り上げの85%を占めるようになった。日本市場に対してもグローバルと同様の戦略を持ち込んで注力する。そのためには販売パートナーによるB2B販売が欠かせない。ビジネスの成功を導くため、技術的な機能と各製品のブランド強化を続ける。
--Nichols氏が責任者となってから利益を3倍に押し上げたとお聞きしています。その理由を教えてください。
私は2つの領域に軸足を置いてきた。1つは社内に対して「実行力と成功」をキーワードとして周知させる。もう1つは、時間やコストといった細部にこだわって結果を出し、前年度を上回ること。多くの企業は予算や目標値を設定するが、弊社は前年度を上回ることを重視し、そこを評価基準としている。そのため社員が目指すべきゴールは一目瞭然。例えるならば、海辺に高速艇を一列に並べて、一斉に同じ方向へ発射するイメージだろうか。
--そのような場面で御社製品「MindManager 2018」を活用されているのでしょうか。
その通り。「MindManager 2018」でなすべき行動を決めている。マインドマップは限定された領域を対象にした発想法だが、我々が(2016年8月に)買収したMindjetのMindManagerは、より幅広い範囲に活用可能だ。プロジェクト管理や情報記述、ビジネスプロセス管理、構造の可視化に用いられる。
Corelが2016年8月に買収したMindjetの「MindManager 2018 for Windows」
--最後にビジネスの具体的な成功哲学をお聞かせください。
常に数字を基準としてビジネスの拡大を考えるべきだ。多くの企業はプレゼンテーションで会議を始めるが、そこでは「こう思う」「こうであってほしい」「たぶん」など、不確実な部分が多く見受けられる。弊社はそうではない。始めから数字を見せてから会議を始める。われわれは「分析を用いたビジネスの意思決定手法」と呼び、財務や研究開発など各部門も同様の手法を導入した。
マーケティングや販売の文脈から見れば、10年前のマーケティング=クリエイティブという概念は消え去り、現在はデータを確実に解析する専門化がマーケティングと販売を担っている。だからこそ数字を基準とすべきだ。