カナダに本拠地を置くOpenTextは、エンタープライズ情報管理(EIM)で知られる。だが、主として買収戦略によりビジネスネットワーク、顧客体験管理などにもテリトリーを広げており、現在も技術の拡充を図っている。同時に、AIでは「Magellan」を1年前に提供開始し、ライバルIBMに戦いを挑んでいる。
同社が7月12日までカナダ・トロントで開催した年次イベント「Enterprise World 2018」で、バイスチェアマン兼最高経営責任者(CEO)のMark Barrenechea氏がOpenTextの事業全体について記者からの質問に答えた。

ロサンジェルス群のHR部門アシスタントディレクターのMurtaza Masood氏
Magellan:各製品への統合を進める
まずはMagellanについて。Magellanは、2017年のEnterprise Worldで一般提供となったOpenTextのAI・コグニティブプラットフォームだ。1年を振り返り、Barrenechea氏は「素晴らしい1年だった。トレンドに移り変わりはあっても、(AIは今後)中核の機能になる」と語った。
具体的な顧客数や売り上げについてはコメントを控えたが、100以上のPoCが進んでいるとのこと。社名としては、オーストラリアの銀行Westpac、ドイツの製造業Knorr-Bremse、マレーシア空港、ワインのErnest & Julio Galloなどが挙がった。中でもErnest & Julio Galloは、自分たちのワインを直販するECのオペレーションとディストリビューション、さらにはブドウ畑に備え付けたIoTデータにもMagellanを利用しているという。天候などのデータからパターンを見出してスケジュールを調整するなどのことを行なっているそうだ。
「統合にフォーカスして取り組んだ。MagellanをOpenTextのデータに統合することを通じて、データモデルを見直し、必要に応じて強化した。APIも同じように強化した」という。Magellanの位置付けは、OpenText専用のAIだ。Barrenechea氏はこれを、Salesforce.comのAI「Einstein」やSAPの「SAP Leonardo」になぞらえながら、「OpenTextのEIMの情報を解放することが目標。汎用性があり、誰もがさまざまな目的に使えるAIといった類ではない」と暗にIBMを批判した。
Magellanは、同社の各製品に統合が進んでいる。4月にリリースした「OpenText Release 16 Enhancement Pack(EP)4」でバージョン2となり、バージョン3に向けての作業を開始しているという。
パブリッククラウド対応:新しい成長の柱に
今年のEnterprise Worldの目玉となったクラウド戦略については、オンプレミス、マネージドサービスに加わるものとなる。「われわれの顧客はGlobal 1000だ。新薬の知的所有権や発電所の計画といった機密情報をパブリッククラウドに置きたくない。一方でクラウドによるメリットは享受したいと思っている」とBarrenechea氏、同社が”プライベートクラウド”とするマネージドサービスは、そのようなニーズを満たしているという。「(マネージドサービスの)顧客数は2000社に達している。事業は成長しており、拡張している。重要なビジネスだ」(Barrenechea氏)。今回このマネージドサービスをパートナーも提供できるようになった。
Enterprise Worldではまた、Release 16(Enhancement Pack 5)をAmazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platformで動かせるようになることを発表したが、これを「(パブリッククラウドへの対応は)正しく行う必要があった。コンテナ化により実現できた」と説明した。パブリッククラウドで動くことで、「新しい顧客を獲得できるだろう。OpenTextにとって新しい市場を開くことになる」とBarrenechea氏は見る。
同じくEnterprise Worldでベールを脱いだのが、ハイブリッドクラウドプラットフォームの「OT2」だ。開発者が簡単にアプリケーションやサービスを構築できるものだ。マイクロサービスベースで、オンプレミスにある情報、クラウドにある情報を組み合わせることができる。