海外コメンタリー

インドに蔓延するサイバー犯罪、巣窟は小さな田舎町

Rajiv Rao (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-07-24 06:30

 大規模な詐欺行為と言えば、Jeff Skilling氏とAndrew Fastow氏の大規模な経済犯罪を思い浮かべる人もいるだろう。2人はこの事件で、Enronが被った数億ドルの損失を隠蔽して数百万人の株主をだまし、低所得の消費者から法外な電気料金をむしり取った上に、会社を潰す前に私腹を肥やしていた。

 あるいは、Enronのような大企業は持っていなかったものの、驚くような巨額詐欺によってたった1人で700億ドル(約7兆8600億円)もの損害を与え、億万長者の投資家を何人も破産に追い込んだBernie Madoff氏のような例もある。

 しかし、もっとも意外な国家規模の詐欺集団を挙げるとすれば、インドのジャールカンド州の田舎にある小さな町、ジャムタラに住む若い男たちだろう。ただし彼らの行為は、インドに急速に蔓(まん)延しつつある詐欺の氷山の一角に過ぎない。

 この町の詐欺師たちは、インド中の何百万人もの銀行口座保持者から、効率的かつ確実に金銭を奪ってきた。その被害はあまりにも深刻で、いつ何どき、互いに理解できない言葉を話すインド各地の警察官たちが(インドには23種類の言語、5000種類の方言がある)ジャムタラの警察署に現れて、この町がどうやって自分たちの州の何百万人もの住人を騙したかを突き止めようとうろつき始めても不思議ではないほどだ。実際この町には、2015年4月から2017年3月の間に12の州の別々の捜査チームが23回現れ、38人の詐欺師を逮捕している。

 男たちの詐欺は、次のように行われる。まず、誰かが違法に売られている既存の電話番号、あるいは新しい電話番号のデータベースを手に入れ、それを彼らの臨時オフィス(つまりジャングルに近い開けた場所)に持ってくる。そこからうまみのあるターゲットだけを抜き出した短いリストが完成すれば、仕事は忙しくなる。次の手順は、グループの中の口の上手い男が、銀行の支店長の振りをして電話をかけ、ATMカードが利用停止になる可能性があると脅しつつ、口の軽い被害者から銀行口座やカードの詳細情報を引き出すことだ。

 心配になった騙されやすい被害者が、取引が停止されないようにと情報を吐き出したときには、すでに男の仲間が、偽の身分証明書を使ってあらかじめ開設してあった電子ウォレットにその情報を入力している。その数分後には、哀れな被害者の口座から金が吸い出され、その場でグループのメンバーに分配されているという具合だ。これがインドで最先端の、巧妙で効率的な低レベルの犯罪組織であり、このような組織は今後大幅に増えると考えられている。

 Livemintの記事で明らかになったとおり、インド政府が進める金融包摂の取り組みによって、同国の普通預金口座と当座預金口座は合わせて15億口を超えた。クレジットカードが2900万枚以上、デビットカードが8億2000枚以上発行されていることも考えると、近い将来インド人口の70%が、急速に普及しつつあるスマートフォンや安価なデータ通信を通じてこの経済環境に参加するとみられている。このままでは深刻な事態が起きるだろうことは明らかだ。

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