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DeNAのKaggle日記

第1回:なぜDeNAは「Kaggler」を集めているのか? - (page 2)

山田憲晋 (ディー・エヌ・エー)

2018-07-25 06:50

引き出しの広さとスピード感こそKaggle人材の魅力

 Kaggleをやっている人たちに対して、「0.001ポイント程度の小さい精度を争っても意味がないのでは?」と批判をする人がいますが、実務においてわずかな精度を追求することを目的としてKagglerを集めているわけではありません。

 Kagglerの魅力は、幅広い機械学習問題への取り組み経験から得られる引き出しの広さと、限られた時間で高いレベルのアウトプットを生み出せるスピード感にあります。

 DeNAは、主力のゲーム事業に加えて、ヘルスケア、オートモーティブ、ソーシャルLIVE、スポーツなど多種多様な事業を展開しています。事業特性に応じた分析課題に対して、どの手法を利用するかの決定においてKagglerの幅広い経験が生きてきます。Kagglerの出す分析アウトプットの精度は多くの経験に裏打ちされたものであるため、分析を依頼する側も安心してアウトプットを利用することができます。

 また実務では、限られた時間の中でクイックに分析結果を出して次の業務の方向性を決める必要があります。分析アウトプットを出すまでの圧倒的なスピードが、Kagglerの大きな武器であり、非常に高速なPDCAサイクルを回すことが可能です。

Kagglerのイメージ

AI技術の実用化にもKagglerのデータサイエンス力が必要

 AIシステム部では、AIアルゴリズム系エンジニアとしてAI研究開発エンジニアとデータサイエンティストが存在します。

AIシステム部
AIシステム部

 AI案件の特性ごとに適切な人材配置を検討しますが、AI研究開発エンジニアとデータサイエンティストが一緒にプロジェクト参画することで、大きな成果が期待できる案件がいくつもあります。以下、DeNAで取り組んでいるAI案件のいくつかを簡単に紹介します。

・事故削減への取り組み

 車載カメラから得られる映像情報やセンサ情報を利用して、事故削減を目的としたAIを研究開発しています。車外映像から車両、人物、走行レーンを検出したり、車内映像からよそ見、眠気などを検出したりするためにコンピュータビジョン技術が使われますが、それだけでは事故削減の目的は達成できません。実際に検出された情報をもとに、どのような運転行動が危険なのかをデータサイエンティストが分析して、定量モデル化していくことで、適切な危険アラートを上げることが可能になります。

・「逆転オセロニア」のゲームプレイエージェント開発

 「逆転オセロニア」という対戦バトルゲームで、ゲームを自動的にプレイするゲームプレイエージェントの研究開発に取り組んでいます。対戦を繰り返しながらだんだんと強くなるゲームプレイのコア部分には、深層学習や強化学習などのAI技術が使われています。「逆転オセロニア」でゲームプレイエージェントを作ることの難しさの一つが、数千種類にも及ぶキャラクター(駒)への対応です。データサイエンティストが「表現学習」という手法を用いて、キャラクター(駒)の特徴を分散表現として学習することで、ゲームの学習を効率化しています。

・横浜DeNAベイスターズのチーム強化

 試合の映像データ、トラックマンデータ(※)や実際の試合結果のデータなどを活用して、ベイスターズのチーム強化に向けたAI活用に取り組んでいます。ピッチングフォーム、バッティングフォームなどの映像データの解析には姿勢推定などのコンピュータビジョン技術が利用可能ですが、ただ姿勢が分かっただけでは何の効果もありません。映像データの解析結果と、選手の成績、調子、疲労(怪我の可能性)などとの関係性をデータサイエンティストが分析して、実際の選手のパフォーマンス改善につなげる施策提案を行うことで、初めて価値を生むことが可能になります。

(※)デンマークのTRACKMANが開発した弾道計測器。レーダーでボールをトラッキングすることで、投球の球速や回転数、打球の速度や角度等のデータを高精度に計測できる。

Kaggle普及に向けての思い

 日本のデータ分析界隈では、ビジネススキルの方が重要視され、データサイエンスの根幹である機械学習のスキル蓄積が軽視される傾向があると感じています。データ分析において、サービス課題を正しく理解し、サービス改善施策までつなげるビジネススキルが重要なことは言うまでもありませんが、その先のデータサイエンス技術の追求にもこだわるべきと考えています。その実現に当たっては、深いドメイン知識を持ったデータアナリストが、日々のデータ分析を回す仕組みをしっかり構築し、その上で、機械学習を活用できる体制作りが重要だと考えています。

 DeNAでは、KagglerがKaggleを通して自己のデータサイエンス力の継続的スキルアップをしつつ、事業にも大きく貢献する存在であることを示していきたいと思っています。

 米国などと比べると、日本でのKaggleの認知度はまだまだ低いです。今後、DeNAを起点としてKagglerの有用性をしっかり示しながら、Kaggleの大きな波を作っていきたいです。

山田憲晋
山田憲晋
ディー・エヌ・エー システム本部 AIシステム部 部長
1995年4月NECに入社。TCP Offload Engineなどの研究開発に従事。2008年7月DeNA入社。Mobageのサービス開発・インフラ運用、ゲーム開発チームのマネジメントを経て、現在はDeNA全社のディープラーニングを中心としたAI活用事業の研究開発と分析基盤の構築運用を行うAIシステム部のマネジメントを行っている。

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