前回はマーケティングオートメーション(Marketing Automation:MA)ツールを活用する際の、施策の大まかな流れについて解説しました。今回は、最初のステップである集客においてやるべきこと、考えるべきことを詳しく説明します。
MAツールの文脈での集客とは、オウンドメディアやウェブサイトに見込み客を呼び込むことです。間違えてはいけないのが、MAツールは“魔法の杖”ではないということ。導入しただけで、ウェブサイトに見込み客がどんどん集まるわけではありません。MAツールの機能を理解した上で、地道な集客施策を行うのは、担当者の役割です。
さて集客ステージでは、見込み客が関心を持ってくれる「コンテンツ」を用意する施策が重要になります。ここでのコンテンツの定義ですが、下記のようなものが挙げられます。
- ブログ記事
- 動画
- メールマガジン
- SNSの投稿
- セミナーなどのオフラインイベント
上記のようにオンラインだけでなく、オフラインの施策もコンテンツとしています。コンテンツを作成する上では、ペルソナ、そしてカスタマージャーニーを定義することが非常に重要となるので、それぞれの活用のメリットや作成する上での注意点について見ていきましょう。
ペルソナを作るメリット
ペルソナという言葉を聞いたことがある人も少なくないと思います。簡単に言うとペルソナは、サービス・商品の典型的な見込み客(ユーザー)像です。MAツールの活用においては、まだ顧客にはなっていないが、今後顧客になる可能性の高い見込み客像をペルソナとします。
ペルソナを作成する目的は大きく分けると2つあります。一つは、コンテンツを作成するに当たって「誰に向けて発信するのか」「誰のどんな課題を解決するための情報なのか」という情報発信の方針が決まることです。例えばBtoB企業は、製品やサービスが優れていることだけを伝えても、見込み客に響かないということが多々あります。本当に必要なのは、どんな課題の解決に役立つかという情報なのですが、ペルソナが明確になっていないために、うまく伝えられていないコンテンツは多くあります。
もう一つが社内のコンセンサス(合意)が得られることです。メンバーによって見込み客像が違っていると、施策を考えるにも、コンテンツを作成するにもブレが生じてしまいます。新しいメンバーが入ってきたときでも、ペルソナの情報をまとめたペルソナシートを見せれば、見込み客像を正しく理解してくれることでしょう。
見込み客ではないネガティブペルソナ
仮想的な見込み客像であるペルソナですが、MAツールを活用するに当たってはそれだけでは足りない場合があります。ウェブサイトへのアクセスが集中したけれど、とても見込み客にはならないようなユーザーばかりだった。こんな失敗もよく聞きます。こうした失敗を避けるために、明らかに見込み客ではないユーザー像を「ネガティブペルソナ」として用意することをおすすめします。
ネガティブペルソナがあることで、それに該当するユーザーを集客するような施策はしない、リード情報を獲得してもそれ以降のフォローはしない、追い掛けない、という判断がしやすくなり、無駄にマーケティングコストを割く必要がなくなります。
ペルソナの作成ではインタビューを重視しよう
さて、ペルソナは典型的な見込み客像ですが、単なる妄想ではありません。きちんとデータを集めて、見込み客になり得る人の傾向をつかんだ上で設計します。そのために重要なのがインタビューです。
「インタビューは時間と手間が掛かるから、アンケートだけで済ませてしまおう」という声をよく聞きます。確かにアンケートの方が数も取れる上に手間も掛からないのですが、「なぜそう考えるのか」「具体的にどんな風に行動するのか」といったことを深掘りするのが非常に困難です。できる限り、顔を合わせて質問できる機会を用意して、しっかりとインサイト(洞察)を得るようにしましょう。
では、誰にインタビューをすればいいのでしょうか。理想は見込み客と断言できる人たちですが、なかなかインタビューをお願いできるような接点が得られないことが多いでしょう。そこで既に顧客になっている人にインタビューするのがおすすめです。また、普段見込み客と接する機会が多い営業担当者に聞いてみてもいいでしょう。
新規事業で既存顧客がいないという場合でも、過去の事業で知り合った顧客などにその新規事業についてヒアリングしてみると、傾向がつかめる場合もあります。アイデア次第で、適切なインタビュー対象者を探すことはできるので、あきらめずに探してみましょう。
インタビューする人数は多いほどいいのですが、当社では大体3~5人くらいを目安にすることが多いです。インタビューをしてみて、傾向が大きくばらけるようなら、人数を増やしたりしますが、5人でも十分傾向が見えるケースが多いです。