中国の海賊版問題は改善されているが、一方で中国を連想するキーワードとして「海賊版」を挙げる人は今も多い。中国における海賊版問題と解決の現状についてまとめたレポート「2018年中国氾娯楽版権保護研究報告」が調査会社のiResearchより発表された。中国で海賊版についてまとめたレポートは珍しい。
中国でインターネットが普及し始めた段階から中国語のWEBサイト上で海賊版が出回ってはいたし、またそれ以前にも音楽コンテンツはCDが、動画コンテンツはVCDやDVDが、書籍はひどい印刷品質の本がそれぞれ出ていた。2000年前後からインターネットが普及していく最中も、映像、音楽、書籍(テキスト)ともに、2010年台まで海賊版が出続けることになる。コンテンツデータサイズから、書籍、音楽、映像と海賊版がネット上でアップされていったわけで、この順に紹介していく。
書籍の海賊版は1998年あたりより個人の趣味とアピールしたい欲望を背景に、掲示板サイトで転載されていったという。書き手はオンラインで作品を書き、海賊版でも名前を知ってもらい、人気になった後出版化につなげるという手法をとった。2002年に登場した「起点中文網」を皮切りに、ネット文学サイトが続々と登場し、有料会員には専用コンテンツを用意するも、さまざまなサイトに限定のテキストコンテンツが転載された。結局書き手は従来のネットでタダで読ませてリアルで出版する手段を選んだ。
音楽の海賊版は2000年前からだとしている。当時mp3形式のファイルが普及しデータがシェアしやすかった上に、2001年にiPodが発売されると、ポータブルmp3プレーヤーが無数のメーカーから発売され、普及が加速した。さらに普及が決定的になったのは、検索サイト百度(Baidu)がリリースしたMP3検索サービスである。曲名を検索すると、検索結果画面から直接音楽が聴けてダウンロードができた。2005年よりレーベル会社が訴え、正規版化への誤記が進んでいく。
動画の海賊版は2005年に「土豆(TUDOU)」や「優酷(YOUKU)」といった動画サイトが登場してから盛り上がる。当初は正規版配信の声はないに等しい状態だったが、2008年には北京オリンピックの海賊版動画配信を政府が叩き、2010年以降大手ポータルサイトの「捜狐」などが反海賊版聯盟を設立するなど企業も正規版配信意識を高める運動をすることにより、少しずつ正規版の存在が認知されるようになる。
書籍音楽動画の海賊版蔓延が大きく変わったのは2010年以降だ。政府が著作権法改正やコンテンツ配信についての通達を発表しだしたのも、反海賊版取締キャンペーン「剣網行動」を開始したのもこの時期だ。クラウドストレージを次々と閉鎖させた影響も大きいとしている。ネット大手の阿里巴巴(Alibaba)や騰訊(Tecent)などの企業努力により正規版のコンテンツを無料と一部有料で配信するようになり、コンテンツホルダーが違法配信者を訴えることが当たり前となった。