日本HPは7月26日、商業印刷事業の取り組みについて記者説明会を開催した。商業印刷向けの新たなプリンタ製品群を発表するとともに、印刷による新たな価値提案が注目されていることを強調した。
同日から東京ビッグサイトで開催中の印刷機材展「IGAS 2018」の出展ブースでは、ロール素材だけでなく、新たにリジット(ボード素材)にも対応したハイブリッドプリンタ「HP Latex R2000 Plus」などを展示。さらに「紙、復活」をテーマに掲げ、紙が持つ付加価値を示した。
「IGAS 2018」の展示ブースでは、「紙、復活」をテーマに掲げた
HP Inc. HP Indigo ゼネラルマネージャーのAlon Bar-Shany氏
米HP Inc. HP Indigo ゼネラルマネージャーのAlon Bar-Shany氏は会見で、「紙はSNSと競争できるのか」と切り出し、「商業印刷は下落傾向にあるのは確かであり、マーケティング予算や広告予算の多くが、SNSなどに注ぎ込まれているのが現状である」と指摘。「従来通りの印刷手法では、印刷業界はデスゾーンあるいはレッドオーシャンと呼ばれる中にいるのは明らかだ。だが、新たな価値を創造すれば、それはブルーオーシャンになる。HPはこれまでの印刷を超えた価値を提供できる」と訴えた。
その切り札がデジタル印刷ということになる。
イスラエルでは、Nestle Ice Creamがパッケージに消費者の顔を印刷。わずか1カ月で、国内のティーンエージャーの16%にリーチすることができた成果や、コカ・コーラが、アイスランドにおいて、サッカー代表選手の写真をボトルに採用。販売を伸ばすことに成功した例などを挙げた。
HP Inc. アジアパシフィック&ジャパン グラフィクスソリューションズビジネス バイスプレジデントのMichael Boyle氏は、「印刷によって顧客に新たな体験を提供できる。印刷が顧客との接点を強める提案が行える時代が訪れている」とする。
HP Inc. アジアパシフィック&ジャパン グラフィクスソリューションズビジネス バイスプレジデントのMichael Boyle氏
デジタル印刷によって、短期間に印刷が可能になったり、消費者の満足度を高める提案ができたりするほか、印刷コストの最適化や在庫負担の軽減なども可能になると提案する。日本HPが、IGAS 2018のブース展示のテーマに「紙、復活」を掲げたのもそこに理由がある。
日本HPの岡隆史社長は、「人の感情を動かすには、紙は大事なツールである」とする。Bar-Shany氏は、「HPのIndigoデジタル印刷機は2012年に第4世代の製品を投入して以来、商業印刷の世界において新たなビジネスモデルを提案することができた。これまでに60カ国で800台が使用されており、複数台を導入している企業は100社に達する。デジタル印刷が価値を創造していることを示している」と語る。
HPのデジタル印刷機の印刷枚数は、20年間連続で2桁成長を遂げ、特にここ数年で印刷枚数が増加。2018年度には、A3換算で800億枚が印刷されたという。
日本HP 代表取締役社長執行役員の岡隆史氏
さらにBar-Shany氏は「1993年に最初のデジタル印刷機であるIndigo E-Print1000を発売してから25周年になるが、この第1号機が導入されたのが日本。その点でも日本は特別な市場である」とする。
日本HPの岡隆史社長は、「産業印刷領域はHPにとっても非常に大事な領域であり、成長分野である。大判プリンタをはじめ、システム全体で100メートルの10億円を超えるデジタル輪転機までラインアップを広げて事業を行っている。コンピューティング技術やソフトウェア技術、運用管理技術などを、プリンティング事業に生かすことができる。他社にできないような水準にまで、操作性を良くしたり、運用性を高めたり、生産性を上げたりというのは、プリンティングベンダーとしてのHPの特徴になる。コンピューティングをやっているからこそ、他者にはないプリンティングシステムを提供できる」とした。