Googleが人工知能(AI)に力を入れている。合言葉は「AIを全員の手に」。米サンフランシスコで開催の「Google Cloud Next 2018」(7月24~26日)では、1月に発表した「Cloud AutoML」への拡張を発表した。また、SQL文を用いて機械学習モデルを構築できる「BigQuery ML」もベータ版が提供開始された。
AIはもはやニッチではない
Google Cloud チーフサイエンティストのFei-Fei Lin氏
2017年にGoogle Cloudのチーフサイエンティストに就任したFei-Fei Li氏は、「約20年にわたってAIの進化に関わってきた。AIは今や業界を変革する技術になった」という。「AIは企業、社会、生活を変えるものであり、これを民主化するのがGoogleの役割だ」とLi氏は続けた。
Googleは機械学習/AIの分野で、機械学習フレームワークの「TensorFlow」、機械学習モデルのトレーニングを可能にする「Cloud Machine Learning(ML) Engine」、画像認識や自然言語などの機械学習モデルを提供する「Machine Learning API」などを有する。加えて、機械学習モデルの実行を高速化するTensorFlow向け専用チップ「Tensor Processing Unit(TPU)」は既に3世代目になる。2017年にはデータサイエンティストコミュニティーの「Kaggle」を買収している。
企業の利用も進んでいるようだ。Li氏によると、BloombergがMachine Learning APIの翻訳機能を生かして世界中の読者に数秒でニュースを届けているという。また、eBayはビジュアル検索のモデル訓練を100分の1の時間に短縮することに成功したとのこと。「小売、健康、教育、娯楽などの業界で(GoogleのAI技術が)使われている。AIはIT業界だけのニッチな技術ではない。さまざまな企業がAIを使って差別化を図っている」(Li氏)
この流れを加速するのが、Cloud AutoMLである。コーディング不要で、学習させたいデータを用意するだけで機械学習モデルを構築できる。TensorFlowやCloud MLなどを活用する専門的な技術がなくても気軽に使えるという。第1弾として、画像認識を行う「Cloud AutoML Vision」のアルファ版を1月にリリースした。
衣服メーカーのUrban Outfittersは、Cloud Vision APIを用いてモバイルアプリに画像検索機能を実装した。社内開発ではうまくいかなかったが、AutoMLに商品カタログのデータを与えて訓練したところ、認識精度と処理性能が改善したという。
Google Cloud Next 2018では、Cloud Vision APIのベータ版が発表された。また、自然言語処理(Natural Language)と翻訳(Translation)の2種類のAPIが新たに加わった。日経グループや米Hearstなどがコンテンツのタグ付けや組織化、翻訳などに活用しているという。
AutoMLの登録ユーザーは発表から半年で1万8000に達しており、GoogleのAIサービスを有償で利用する顧客は1万4000を数えるという。
AutoMLのCloud Vision API。葉っぱの画像をアップロードしたところ