7月23日から27日まではテレワーク週間として、多くの企業がテレワークなどに取り組んだ。関連して、仕事をする上で今や欠かせないのがストレージ環境。ストレージも従来のイントラネットをベースにしたファイルサーバから、クラウド型のオンラインストレージへとニーズが移る傾向がある。
従業員の生産性を高めながら、セキュリティ要件を担保する必要があるなど、ニーズは多様化している。こうした動きに柔軟に対応してユーザーを増やしている米Dropboxの最高執行責任者(COO)、Dennis Woodside氏と、グローバルセールス担当バイスプレジデント、Philip Lacor氏、Dropbox Japanの代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏に話を聞いた。
米Dropboxの最高執行責任者(COO)、Dennis Woodside氏(左)、グローバルセールス担当バイスプレジデント、Philip Lacor氏(右)、Dropbox Japanの代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏
Woodside氏は第1四半期の実績は3億1600万ドルと、対前年比28%増を達成。有料ユーザー数も1150万に上り、増加しているという。登録ユーザー数は5億人以上で、180カ国以上で利用されている。ユーザーの80%以上がDropboxを業務に利用している。コンテンツの容量は合計で、1エクサバイト(1000000000Gバイト)に上る。
同氏は、常識を覆すソフトウェア展開戦略を持っていると話す。具体的には、従来が「IT部門中心型の設計」だったのに対し、Dropboxでは「ユーザー中心型の設計」を目指している。同様に、トップダウンの導入からボトムアップでの導入に、ロックインされた環境からオープンエコシステムを志向、総入れ替え型から共存型といった差別化要因を仕掛けている。
日本市場とこうした戦略との相性が良いのか、日本法人の成長率がDropbox世界全体の中で1位だという。特に、教育分野や建設業、デジタル業界での成功につながっている。
教育の事例では、関西大学の3万人以上の教職員と学生がDropboxで情報を共有している。関西大学のIT担当者は「以前のネットワークドライブではファイル共有が困難だったが、Dropboxにしたことで、PCだけでなく、スマートフォンやタブレット端末など、さまざまなデバイスからファイルを利用できるようになった」と効果について述べる。
五十嵐氏は「大学は変革期にある。デジタルネイティブ世代はスマホで情報にアクセスし、卒業論文を親指で書くような学生もいる」と説明。写真などのデジタルコンテンツの増加や学生の質の変化といった要因から、クラウド化が必然の動きであったという。
建設業界でもDropboxが多く使われている。請負事業者、設計士、顧客などさまざまな関係者が存在する中で、文書を1カ所にまとめられることで、建設現場でファイルの検索などが簡単にできるようになる。同期が速く、VPNがなくても完成予想図、設計図、動画にアクセスでき、デバイスのストレージ容量の不足といった事態にも至らない点が導入理由になっている。
Woodside氏は、NAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)といった従来型のストレージシステムから、Dropboxのようなクラウド型のストレージへと変更する事例が増えてきていると強調する。データマイグレーションのサービスも提供するなど、サービス提供者側も日々工夫を重ねている。
セキュリティに関する社内規定などの関係もあり、ストレージのクラウド化が一気に進むかどうかは別にしても、企業の1つの選択肢として、オンラインストレージの役割が高まってきていることは間違いないようだ。