世界三大クラウドプラットフォームプロバイダーの一角を占めるGoogle Cloudは、上位2社がすでに存在感を確立した市場で橋頭堡を築くために同社が投入している資源の規模を見れば、とても無視できる存在ではない。現状では、Google Cloudの売上高は四半期あたり10~20億ドルの間とされており、「Amazon Web Services(AWS)」や「Azure」には大きく水を開けられている。
ただしこの勝負は、まだとても決着がついたと言える状況にはない。企業のワークロードの多くが依然としてオンプレミスで実行されており、クラウドへの移行に関してプロバイダーらの勝負の行方はまだわからない。
同社は、これまでは主に開発者だけを相手にしてきた単なるテクノロジ企業だったという印象を塗り替えるという、長く困難な戦いに挑んでいる。Google Cloudの最高経営責任者(CEO)Diane Greene氏は、米サンフランシスコで開催された同社の年次カンファレンス「Google Cloud Next」でも、「エンタープライズ」のメッセージを繰り返した。同社は、エンタープライズ市場での同社の勢いが増していると強調した。そのメッセージの柱は、一部の調査企業で同社のセキュリティ機能とネットワーキング機能が高い評価を受けたことだ。
しかし現時点では、Googleは顧客と接するエンジニアの数が営業担当者の数よりも多い、普通とは違う「エンタープライズ企業」に見えているかもしれない。このことでよい方向に向かう可能性もある。
Googleが先端技術と人工知能(AI)で高い評価を受けていることは、企業が本当にその恩恵を受けるには、変革が必要になることを暗に意味している。その実例もある。通信事業者に料金請求システムソリューションを提供しているOptivaは、グローバルな分散データベース「Google Cloud Spanner」を活用してミッションクリティカルなシステムを構築しているという。OracleからSpannerに移行する際は、SpannerのアーキテクチャがOracleほど複雑でなかったため、データベースのストアドプロシージャに組み込まれていたコードをリファクタリングする必要があったほか、データの構造も変更しなくてはならなかった。しかし公平のために言えば、ほかのクラウドネイティブなプラットフォーム(「Amazon Aurora」や、「Microsoft 365」のようなOfficeスイートなど)に移行する場合でも、やはり大きな転換が必要になるはずだ。